「 テスの思い出 」  ( 11 ) 
ー 猫のこと ー
 


 一度 、おやじさんの通った小学校を訪れたことがある。
行橋というところ。

 天は人の上に人をつくらず、人の下に人をつくらず 

福沢諭吉のふるさとでもある。

 ここを訪ねたのが、いつだったろうか。
ご先祖のお墓の前で、映した写真がある。行橋に行ったのは後にも先にもこのとき限りなので、この写真が、そのときの写真ということだろう。

 自分は中学一年くらいかな。妹も写ってる。妹はどうも小学校の一年生くらいのようだ。

 そうすると、中学の一年生の頃に、一度九州を訪ねているらしい。それがきっかけになって、中学二年生のときの、一週間のお泊りになったようだ。

 このまちでは、makio-ym の ym ばかりが多かった。
または my なのだった。 同じ苗字がこれほどあるとは。
その親戚のおじさんの所におやじさんたちは疎開していたようだ。田舎の暮らしの中で、身体が弱かったおやじさんは、どんどん元気になっていったと聞いている。

 このおじさんのうちでは鯉を飼っていて池があった。お金持ちというのではなくて、自然が豊かなところだった。水車とかあって水が豊かなところだった。

 きっと、おじさんが52歳で若くして亡くなった。
そのとき、お葬式で九州に戻ったのではないかと思う。

 そのときに、縁側の向こうに子供の影がちらほら。
そう、あー坊とひー坊が会いに来てくれたみたいなのだ。
でもその頃の自分は、もうガキでもあるまいし見たいなところもあったかも知れない。気づくのが遅くて、教えてくれるのもタイミングが悪かったのかもしれない。

 そのとき会わずじまいになってしまったのだった。
どうしてーーー!あーー。

何故そうなるのか?
このときの後悔が…。

 高校に入って九州を訪れたとき、あー坊の引越し先を訪ねた。
あー坊は、計算尺と言うのの大会ですごい成績なのだと言っていた。僕は懐かしがったが、あー坊たち兄弟は、戸惑っている感じだった。懐かしさにも、タイミングがあるんだろうな。 


 おやじさんたちが結婚して、この地に住んだときにテス飼い始めたのだと言う。ちょうどそのころ。

 猫もいたらしい。この猫が、おもしろい猫で、モグラやすずめやねずみをよく取ったり、それをちょっとだけ食べては、見えるところに並べて、飼い主に見せびらかして自慢するらしい、と言うのである。
 また、こわいダメに落ちて、体中いいにおいをさせて、家の中のシーツに寝ていたこともあると言っていた。
 その猫は、物心ついたときにはいなかったが、どこかに、おふくろさんが出かけたときに、街角であったそうだ。
猫は、人を忘れると言うけれどそうでもないらしい。
おふくろさんをみて、ニャーとないたそうだ。
 テスもこの猫くんとも一緒に過ごしているんだろう。

 猫の話を思い出したので。
あるとき、おふくろさんが真っ黒い子猫を見つけてきた。
家で飼うことにした。小さな子猫がかわいくてかわいくて。
 投げると小さいのに身体をひるがえしてパッと着地する。
座布団でお家を作ってあげて、そこに入れて置く。一日中子猫と一緒に遊ぶのだった。子猫は疲れてしまう。
その子猫を家に連れてきたとき。おふくろさんが出かけていたときか?親猫らしき猫が、家にやってきた。子猫を連れ戻しに来たのだろうか。きっとそうだ。部屋は、戸締りをして、締め切ってある。猫は家の中には入れない。子猫が大切にされているのか見に着たのか、子供にかまわれて危機にある我が子を助けに来たのだろう。親猫には、きっとわかるのだろう。
猫のシルエットが窓のすりガラスに映っている。中に入ってくるのではとドッキッとした。

 おふくろさんに話したら、
「子供を取り戻しに来たのだろう」といていた。

 真っ黒な子猫。三日間ほどしていなくなってしまった。
どうしたんだろう。探して回ると。
 床のしたの奥の方で、死んでいた。
僕がかまい過ぎて殺してしまったのだ。
なんということだろう。
本当にかわいそうなことをしてしまった。
妹が産まれる前のこと。
バケツガニでいじくりまわして…。
何事も、そっと見守ることが大切なんだ。

 そのあと、おふくろさんがまた猫をもらってきた。
やはり黒い猫。風呂敷に包まれてやってきた。
しかし、この猫は、風呂敷から出るや否や、逃げ去ってしまった。
一目散。山猫にでもなってしまったんだろうか。

 こうして思うに、きっと家にはねずみがいたのかも知れないなー。

 床下で死んでしまった子猫は、裏庭にいけられたのだろうか。
裏庭で、ひとだま出たことがあると聞いていた。
したいからリン出てそれが燃えるとひとだまになる。とのこと。
ひとだまを見た人は、けっこういた。
 あの子猫のひとだまが出るんじゃないかと、夜はますます怖かった。

「テスの思い出」 その十一  ー 猫のこと ー 
( 2006.7.10  by makio-ym )




       

ソーラさんとアスカさんののん気な一日 第二部 「 テスの思い出 」