きょうは、ついにマッキーさんが、チームのしきりや当番である。
「わーい、今日は、リーダーだ。しきるぞ」
いつも仕切られてばかりだからな。
今日は、さっそうと、みんなを仕切るぞー。
ちょっと、はりきっているマッキーさんではあるが……。
「ソーラさん、ベランダの例のもの、ちゃんとハケで集めて流しといてください。」
「ごめんなさ。ちょっと今別の用事で忙しくて…」
と、ふいっと席を離れてしまった。
(なーんだよ、ちょっとくらいやってくれてもいいじゃないかよー。ひどいなー。)
と思っていると、アスカさんが
「ちょっと、マッキーさん、あんたなんてデリカシーがないのよ、今日は、ソーラさんなんだか元気ないのよ。わかんないの。なんか、しょんぼりしているじゃないの。それをいきなりそんな風にきつい仕事を言いつけてやらせるなんて、いったいどういうツモリなの。あんた、自分の言ってることわかてるの?」
とアスカさんに注意されるマッキーさんであった。
「へっ、そうなの?そんなつもりは毛頭なかったんだけれど。全然気づかなかったものだから…。」
(……。)
「じゃ、アスカさんちょっとやっといてよ。」
「なんですって、それをワタシにやらせようって言うわけ。ちゃんとあなたに状況を教えてあげただけでもありがたく思いなさいよ。ソーラさんに頼む仕事だったんでしょ。とってつけたようにわたしに頼むわけ。あなたね、それでいいと思っているの?
よく考えてからものをいいなさいよ。ほんとに。わたしはこっちやんなくちゃならないから、じゃね。」
(うーん、しかたがないな。でもこれはやっておかないとまずいしなー。自分でやるとするか。)
しばらくして、マッキーさんは、また、仕切る。
「アスカさん、今度は、ペーパーの敷き替えなんだけれど。急ぎでやっといて。」
「いまちょとお腹が痛くて。ごめんなさいねー。」
(なんだよなー、さっきまでなんだかんだ言ってたじゃないか。ほんとにお腹痛いのかよ。どうもウソくさいなー。ちょっとぐらいやってくれてもいいじゃないか。)
するとソーラさんが、
「マッキーさん。なんかアスカさん体調悪そうよ。どうしてわからないの。顔色だってよくないし。気の毒よ。それなのにどうして、こんなときにアスカさんにそんな事頼むの。マッキーさんってそういう人(犬)だったんだ。ひどーい。」
「えっ、そうだったの。お腹いたいのほんとだったんだ。そりゃ気の毒だったかな。気づかなかったからな。……。ところでソーラさん。代わりにやっといてよ。」
「えっ、わたしは今これをやっておかないとだめだから…。ごめんなさい。」
(あっ、いっちゃったよ。ソーラさんもあんがいケチだな。でもこれはいまやっておかないと後に回すとそれはそれで問題だなー。しかたがない、自分でやることにしよう。)
と、またも、いつもの通り、結局は自分でやるのであった。
また、しばらくして、アスカさんが報告する。
「マッキーさん、こちらのお客さんがずっと待てるわよ。あなたに待っているように言われたそうだけれど…。えっ、もう3時間も待ってるの。あら、申し訳ございません。ちょっと、マッキーさんどういうつもりなの。こんなに待たせていいと思っているの。どうするつもり。あやまんなさいよ。お客さんにきちんとあやまんなさいよ。今日は、あんたリーダーなんだからね。」
「えっ、待ってるようにいったの?わたしが? あー、さっき挨拶されたから、うなずいて、こんちわ、しといたけど、そー言うことだったのか。あれで、お客さんは、そのようにとったわけね。ひえー。しょうがないなー。ほんとかよ……。」
それで、3時間待たされたお客さんはすごく怒っていたのである。くりかえし不満をぶつけられるマッキーさんであった。その対応に3時間ほどかかった。最後には社長をに言いつけるようなことも言っていたのである。どうなっただろう?
仕切られるのもパッとしないが、マッキーさんの場合、仕切るのはある意味で危険でぶっそうでさえあることがわかってきた。こりゃ向かないなー。
話は、ちょっと変るんだけれど。
ある日、お散歩をしていると、道路の脇の幅のある水路のところでこどもが遊んでいた。
暗渠(あんきょ)のふたがされていない状態で、梁(はり)だけがかかっている。
こどもは、この幅10センチほどの4,5メートルある梁を渡ることを、肝試しでよくやるのである。下はちょっとした水路、高さは2メートル程度。それでもおちるとちょっとあぶないかも。
ちょっとあぶなくないかなとは思った。
でも、横から余計なことを言うほど確信もない。
声もかけずに通り過ぎようとした。
そのとき、通りかかった小学校4年生くらいの子供が、
「おーい、オメー、あぶねーぞー。」
とたった一言、声をかけて通り過ぎていった。
梁を渡っている本人も、きっとちょっと怖かったんだろう。早々に引き上げていった。
これでOK。
たったひとことで、すべての問題がピタリと解決されたのである。
これこそ、ただしい、目の使い方である。
これこそが、真の仕切りである。
ちなみに、マッキーさんは、カレンダーの大きな字が1メートル離れるときわどい。
みんなは、3メートル離れても、その枠の中の、大安とかも楽勝で見えるとのこと。
マッキーさんには、テレパシーか超能力としか思えないのである。
このような、仕切りは、ほんとに惚れ惚れとするのであった。
マッキーさんは、まずは自分をきちんと仕切ることに専念することに決めたのである。
それはそれで大変に意味のあることだろう。
(おしまい)
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