「何より大切なもの? そのニ」



 わたしは、おもむろにそれを手にする。
そして、ベランダのあちこちに散在するウンチを拾い集める。
箱の中にもある。
 ベランダに置いてある屋外用の小屋の中にはなかった。
 屋内のゲージのなかにも乾いたのがあった。

 三日間の割りになんとなく多いな。三つだけと言うことはない。
小さなチリトリが一杯になった。
 充実感を感じる。

 それを、そーと運び台所をよこぎる。
この作業過程のなかで、もっとも緊張を強いられるところである。
 こぼすとやっかいそうなので、息を殺して一気に運んだ。

 トイレまで運び、流した。
乾燥して固いと水にふやけるのに時間がかかるだろうな。
まあ、でも、このぐらいの量なら一気に流れるだろう。よしよし。
 念のために、もういちどトイレのレバーを引いた。

 これで、重要なパートは終了しているので気が楽だ。
真あたらしペーパーを箱の中にさわやかに敷く。

 なにごともやはり基本が大切である。
やはり、こういうダーティーな仕事こそが、
実は、彼女たちの文化的生活の基礎を築いているのである。
 ウンチに囲まれたなかで、彼女たちの犬としての尊厳はないのである。

 本当に可愛がるということは、きっと、こういう華やかでもない、
地味な仕事をこつこつとすることなのだと反省させられる。

 散歩のとき、一応ビニール袋は持ってゆくのである。
でも、あまり、散歩の途中では彼女たちは例のものをしないのだ。
 ウチにたどりついてから、急いでベランダへ行き済ますのである。
何でか、そういうことになっている。
だから、散歩から帰りつくと、急いでベランダへ出たがるのだ。

 それでも、ときに歩いていると
突然とまってしまうので、

「あれ」っとふりかえると

 「おっ」 

背を丸くして座り込む固有のポジションをとっていることがある。

 道の真ん中をソーラさんは好むようである。
なんでだろう。
 すこし道の端の方へ寄るように紐をひいてうながす。
落ち着いているところ申し訳ないが。

 そこで例のビニール袋が役にたつ。
袋の中に手を入れる。
そして、例のものをビニール袋こしにつかむ。
柔らかな手触りではあるが、ビニール越しなので、
何の影響も及ぼさない。
そして、その袋をひっくり返せばあら不思議、
例のものは、ちゃんとビニール袋に収まっている。
 ビニール袋の口を縛り、そのまま袋をくるくると回しながら、ウチまで帰る。
そして、燃えないごみに捨てる。

 でも、ミニダックスの例のものは、
(例のものとかいうと、返ってなんか変な感じ)
コロリンとあまりに小さくて、ほんとに丸くなる。
 丸くなるのはいいとして、小さい。
こんなものを、一枚のビニール袋で処理するのは、
あまりにももったいない。
環境問題にも悪影響を及ぼす。
(けっこう無理にこじつけている)

 というわけで、
 わたしは、用心深く、周囲の人の気配を確認し、
中学校のフェンス沿いに生えている雑草や、木の葉っぱ、枝などをおもむろに取る。
コロリと丸いウンチをさささっと道路の隅へ転がす。
 できたてのウンチは、少しコロがりにくいけれどー。

 側溝のふたは道の端で浅い溝を作っている。
そこまで、ウンチを転がして、OK。ちょいと葉っぱをかぶせる。

 道の端ならわざわざ踏んでゆく人もいないだろう。
ニ三日もすれば、コロコロと乾き、踏んだとしても特に問題は起こさなくなると思う。

 そう、思うがーー。

 以前友達と道を歩いていた。地方都市。
そのたびに、友達が
 
 「あっ」
とか、

 「おっ」
とか言う。

 そのまちには、犬の糞がよく落ちていたようで、
ど近眼のわたしは、それに恐れることなく平気で歩いていたようだ。
そして、幸いにもきわどい線でそれをかわしてもいたようだ。
 乾燥しているのを踏んだところでさして問題はない。
しかし、レアなのをふんだこともある。

 やっぱり頭に来た。

 前に一緒にいたワン太郎さんは中型犬だったので、ウンチも大きかったので、木の枝で道の端へころがすような、このようなことはしなかったと思う。

 ミニダックスのウンチは小さいからー。(^^;)
 いい訳には、ならないかも。

 ウンチは、健康のバロメータでもある。
これが思うように行かずに苦しんでいる人もある。
血圧とかにも影響するんだってね。

 ウンチは、犬の文化的生活と基本的犬権の尊重と、
健康にとって、とても大切である。
また、介護の基本でもある。(何のことだか?何のねただろう)

 箱の中に、さわやかに敷かれたペーパーの上に彼女たちは上がっている。
食事を出すと、食べるのが先か、はたまた、おしっこが先か、
お互いの出方を見つつ迷っているようだ。

 アスカさんが器のところに食べに来たが、また箱の中に戻っていった。
もう少しタイミング見て、食事を出したほうがよかったかもね。

 もうバスに乗らないといけない。

            (おしまし)
                         (2002年5月中旬)

 (このページに流れている曲は「雲」です。やんかんさんの作品を使わせていただいています。ユーモラスでユニークで楽しいです。雲が空を流れるようです。聞いてください)

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