「何より大切なもの?」



 この3日間ほど、おふくろさんは泊り込みの旅行である。
 
 それで、ソーラさんとアスカさんのお世話を
いいつかってはいた。

 といっても、夕方の食事はおやじさんがやるわけだし、
特にいつもと変わったところはないのである。

 しかし、おやじさんは、彼女たちと遊んであげると言うことはあまりしないので、
すこしストレスがたまっているみたい。

 うちに帰り着くと、いつものように、ゲージの中にいる。
いつもは静かにしている。 
 しかし、この日は、わたしが帰り着くと、すぐにゲージの扉がカタカタと鳴って
騒がしい。そして、

 「うーワンワン」 

とないたりする。

 「あっ、そうか。今日は、遊んでもらってないんだなー。」
と気づく。

 いつものように、ベランダへ出てもらう。
でも、なんーか、
いつもよりエネルギーがみなぎっているみたい。

 いつもより、少し長めに、部屋の中を歩いてもらって、
「まー、遊ぶのも面倒だし、すこし、そこらをうろついていてもらおう。」

 まあ、でもすこしはあいさつぐらいしておかないとな。
それで、ちょっと抱き上げて。顔をしげしげと見た。

 「はい、おしまい」

 なんだか、物足りなさそうだ。

 それで、おふくろさんが旅行に出かけた三日目の朝のこと。
 わたしが出かける前に、彼女たちにベランダへ出てもらう。

 もう、五月ともなれば、陽気もいいので、
彼女たちは一日、ベランダで過ごすのである。
 まあ、雨の日もあって、少し薄ら寒い日もあるけれど、
外の方が気持がいいだろう。

 外は、風も気持がいいだろうし、
鳥の声や、ほかの家の犬たちの声もよく聞こえるだろう。
お日様もあたたかい。
きっと、いろいろな匂いも風に乗って伝わってくるだろう。
外のほうが退屈しないと思う。

 ベランダへ出てもらって、朝の食事をやろうとした。

「あれっ、あっ、そういえば」

 おふくろさんに、おしっこをする箱のなかの紙を敷きかえるようにいわれていた。
 紙オムツのペーパーを転用している。水分を吸収するのである。

 今日は、おふくろさんが帰ってくる日でもあるし、一応一回くらいやっておかないと、
なんぼなんでもまずかろう、
と朝からその紙をしきかえることにした。
わたしは、なかなか、よく働くのである

 彼女たちは、朝、まずベランダに出るとおしっこをする。
だいたい、箱のなかのペーパーの上にすることになっている。

 でも、ペーパーが汚れていたりすると、おしっこをそこではしない。
ちゃんと、場所をきめてあるのに、ベランダのコンクリーの上でするのである。

 ベランダのコンクリートの上はきれいだし、乾いているし、
お尻ざわりもいいのだろう。
 
 食事をあげようと準備をしていて、そこに気付いた。

「箱の中に入ろうとしないなー、確か汚れているとしないんだよなー」

 そうだ。わたしが、敷いてあるペーパーを替えなくちゃいけないんだよな。
と言う訳である。
 朝なので時間もない訳だが、せっせと働いた。

 まず、見回してみるとウンチがおもいがけなくあちこちに
多く点在していた。

 「そうか、こういうことになるんだな」

 ミニダックスのウンチは、小さい。
これは、ありがたい事かも知れない。少スペースですむ。
 このように、3日間ほど放置しても、二人分であるにもかかわらず、
それほど重要な事態を引き起こしてはいない。

 ミニダックスのウンチは小さくて、コロコロとしている。
 ウンチもミニサイズだ。
それがすでに日中の陽射しに乾燥して、扱いやすくなっている。
見回せば、ベランダの隅にはウンチ回収用のハケのようなものと、
ミニサイズのチリトリが用意されている。

                (つづく)

      その二