「 赤ちゃんの頃のソーラさん 」



 ソーラさんがウチに来たのは、まだ小さな赤ん坊の頃であった。1997年10月1日生まれとのこと。ウチへ来たのは、1ヵ月くらいたってからのこと。バナナボートというお菓子があるが、そのぐらいの大きさかな。もう一回り大きかったかな。とにかく、片手の手のひらに乗るくらいだったような。
 
 まだ、哺乳瓶でミルクを飲ませていた。鼻先も、今みたいに長くなかった。丸くて短かった。毛も長くなくてつるつるしていた。しっぽも細くて、豚のしっぽみたいだった。夜もお腹をすかせてないていた。クークーと切なそうになく。何度かおこされることになる。

 とにかく、最初のうちは、当然のことながら、手がかかったようだ。と言うのは、わたしは全面的にずーと一緒にいたわけではないのである。わたしの方の住まいに彼女が来たのは、実は1998年も5月をすぎてからである。それまでは、おやじさんたちの住む団地の方にいたのである。

 わたしも、ソーラさんがやって来てからは、団地の方へしばしばと足を運んでいた。おふくろさんがよくミルクを飲ませていた。部屋のあちこちでおしっこをするのでしつけながら叱っていたりした。おやじさんが夜眠れないと恨めしがっていた。犬でさえ大変なのである。人間の赤ちゃんはもっと長い時間をかけて、大きくなるので、お母さんの大変さはきっと想像をはるかに越えることだと思う。

 ソーラさんとわたしと留守番をしていたことがある。わたしは、子供の頃から、何でもいじりたくなって、しまいにはよく物を壊したりしていた。周りの人は、それをひどく恐れもしていた。大人になってからは、何事も、そっと見守ることの大切さを充分知っているのである。しかし、子犬は、とてもかわいいし、またソーラさんは赤ん坊の頃から生意気で、つい、からかいたくなる。

                     (つづく)  
     その二