いつもは、仕事の帰りもけっこう遅いし、散歩がおっ苦なんだけれど、
「さあ行こうか」
と思っていると、おふくろさんが、
「今日はお散歩すみました」、
などとメモがあると、どこかがっかりする。
もう一回行かないかとさそっても、彼女たちは乗り気でないのだ。
実は、案外、私のほうが、お散歩を楽しみにしていたりする。
ひとりで、ウォーキングしても、アホみたいである。
日曜日の午前中、ポカポカと日のあたる芝生を、
のーんびりと、彼女あたちの光に輝くこげ茶色の毛並みをみつつ歩く。
そよ風にふかれて、緑の木々や、花や、すれ違う人や、子供たちの呼び交う声を聞きながら歩く。
彼女たちも、そして、私にとっても、とても平和で楽しい時間である。
お散歩は、実は、彼女たちがわたしにプレゼントしてくれるひと時なのである。
そして、歩くことは、健康にもとてもよいのである。
ウチのすぐ隣が中学校だ。
中学校のフェンスに沿って歩いてゆくと、広々とした中央公園である。
日曜の日中、彼女たちとお散歩に出かけると、
部活の中学生の集団が中学校のフェンスに沿って走りこみをしている。
通りかかる子供たちが、
「わー、かわいいなー。」
などと話しながら通り過ぎる。
なんだか気はずかしい。
女の人が連れて歩いていれば、絵になるかも知れない。
わたしのようなおじさんが、かわいらし彼女たちふたりを連れて歩くのは、
どうにもミスマッチな気がする。穴があったら入りたい。
わたしが連れて歩くとすれば、
茶色の中型の柴犬の雑種のオスが似合うだろう。
公園で遊んでいる子供たちも、珍しげに、好奇心一杯で彼女たちを見ている。
よってくる子供もある。
「かわいいな。さわって見たいけど、かまないかな」。
子供たちは、犬が大好きなのだ。
彼女たちが特にものすごくかわいいということも
少しあるかも知れないが(うぬぼれている)、
生き物がすきなのだ。
そういう子に限って悪い子はいないと思う。
朝は、お年よりとよくすれ違う。
静かな涼やかな朝の空気を深呼吸しながら、
愛犬たちと歩いたり、ウォーキングの仲間や、ご夫婦で歩いたり
している。杖をついてリハビリで散歩している方もある。
行き交う人に
「おはようございます」
と声を掛け合ったりもする。
「あら−、ご姉妹ですか」
と話し掛けてくるおばさんもいる。
お年よりは話好きなのだ。
わたしは、こんな時間も大切だと思うので、
「いいえ、おばさんと姪っ子ですよ」
などとしばらく話したりもする。
(おしまい)
(2002年3月中旬)
(このページに流れている曲は「East end morning」です。Kassyさんの曲を使わせていただいています。海をわたる風のように、お出かけ前の軽やかな気分になります。聞いて下さい。)
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