「 マッチ売りのソーラ その三」




 「あー、なんて綺麗な雪かしら」

 家々の灯りはみな暖かそうだ。
窓辺によってみると、みんなの笑う声が聞こえる。

 子供がお母さんにしかられているのかな。泣き声も聞こえる。にぎやかだなー。
街は、深々と寒さを増してゆく。美しい雪は空から舞い降り、そして街を純白に染めてゆくのである。



 ソーラさんは、とある家のベランダにたどり着く。

 もう冷え切った身体には、苦痛を通り越して、寒ささえも感じなくなっている。
そのベランダから、家の中をのぞいてみた。


 すると、ちょうどソーラさんと同じくらいか?
あるいはもう少し更けているかも知れない。ミニダックスがいる。

 ご主人はテーブル脇のイスい腰掛けて、テレビを見ている。
その太ったミニダックスはご主人の足元にいる。

 そのすぐ側には、赤々と石油ストーブが燃えている。


 「おー、今日は、寒いなー。おー寒びー。こんな日はねー。
もうストーブにへばりついているのに限るね。
あっ、そーだ。薩摩白波のお湯割りでも飲もうかなー。
身体があったまるからなー。」


 アスカさん(窓から見えるミニダックス)は、ご主人の足元、ストーブの前の特等席に寝そべっている。のへーっとなっている。それにあき足らずに、横倒し寝たりしている。コロリっと転がって、背筋まで時どき伸ばしている。(猫じゃあるまいし……)

 「ご主人、そろそろ、飯ー。今晩は、クリスマスなんだからさー、ご馳走にしてくれー。
最低ラインはおいものスライスだね。ドッグフードなんか食ってらんないよ。
冗談じゃーない。クリスマスだから、鳥のもものローストなんかいいなー。
でも鳥のホネはミニダックスにはよくないから抜いといてね。
時どきのどにつかえたりするんだよね。よろしく。
もう一回、言うけど、ドッグフード。あれ絶対やだからねー。」

 「よし分かった。じゃー今日は、特別、ロースト行っちゃいますかねー。」

 「おっとー、さすがはご主人太っ腹。
……おっと、こりゃ旨いねー。旨い旨い。ガハハハハー」


 
    その四