このようにわたあめを食べることが出来る瞬間、タイミングは実に限られているのである。そしてその瞬間とは、お祭りの夜だったりすることが多いわけだ。
そうすると、わたあめには、必ずそうしたちょっと普段とは違う特別な一日の印象が、その味と一緒に心に残るんじゃないだろうか。
わたあめの美味しさとは、優しいシンプルな熱した砂糖の香ばしさと、あの特徴のあるふわふわの姿と、大きい割りにすぐにふわりと消えてしまう儚い食感と、
そしてその日の楽しかった思い出がミックスされた味なのである。
さて、っと(^^)
どうせつくるならば、究極のわたあめを……。
しかし、こればかりは、ラーメンとか、フランス料理とかとはちがって、出来ることが大変に限られている。
ある意味では、これはすべてのわたあめが究極といえないこともない。
「まかせて頂戴。こんなのかんたん、かんたん」
アスカさんは割り箸で、大きなわたあめ機のタライのなかをかき回す。
わたあめのふわふわを追いかけ回しているようだ。
わたあめは、真ん中の穴にザラメ砂糖をいれると、その部分は高温で砂糖が溶けるようになっている。
そしてそれは高速で回転する。すると解けたザラメ砂糖液が遠心力で外へ飛ばされてゆく。回転するお皿は周囲が網の様になっているから、遠心力で飛ばされる砂糖の高温の液がその網目を通って細いシャワーのような感じ。それが飛んでいるうちに冷えて固まってくるので、細かい糸のように、または、雲のように霧のようになる。それをうまい具合に、割り箸にまといつかせると、わたあめの完成。
アスカさんは雲のようにうっすらとわいてくる砂糖の糸を追いかけまわしている。
追いかければ追いけるほどにわたあめの雲は逃げていってしまう……。