さて、その決戦の舞台は、時代を超えて、今、このとき行われんとしている。
うさぎとかめの子孫であるところの、うさーラさんとアスかめさんの戦いなのである。
時代を経るごとに、競争のフィールドであるところの大自然は、失われて行くのである。ご先祖が戦ったのは、広々とした野山であった。向こうの小山のふもとが見渡せたのである。空は青く風が澄み渡る秋。川の流れはとうとうと。人家など見渡す限り一軒も見えない。見渡す限りの自然。森と野原とそして山々……。
あちこちでこの決戦の行方を見守るのは、狐や狸をはじめとする昔話に登場するいつものメンバーであった。今では、あのキャラたちはどこへ行ってしまったんだろう。
ビルや高速道路、コンクリートに囲まれて、うようよと人間たちが波のよう溢れ返っているのである。いなごの異常発生かな?と久しぶりに街に出てくる。アスかめさんには思えるのであった。
いよいよ、また、この日がやって来ましたよ。
悔いのない戦いをするように。持てる力のすべてを出し切れるように……。
うさーラさん、そしてアスかめさん、あなた方のご先祖も立派にこの決戦を戦って来たのですよ。それに恥じないようにおふたりとも頑張ってください。
わたしは、これから実況中継をかねて審判として見守らせていただきますよ。
( さてquesutionです。この審判は誰でしょう?
ヒントーくちばしがかなり長くて、細身です。……その乗りは ^^;)
準備は、いいですか。それでは……。
あっ、そうそう、いい忘れましたけれど……。
反則はなしですよ。ご先祖に恥ずかしいですよ……。
途中でタクシーとか拾ったらいけませんよ。
一応、空を飛ぶのもダメです。あっと、おふたりは飛べませんねー。お気の毒なー(。。)
「あのー、すいません。審判さん。なんか本題からずれてませんか……(・_・)。いますごくやる気なんですけど……」
あっと、これは申し訳ない。
(ちょっと、すべってますかねー)
それでは、いよいよ、行きますよ……。
あっ、それから……。
「もういいですよ。まじモードですから。さっさとスタートして下さい。」
あっと、これは……。分かりました。
ドーーーん
「えっ、いきなりだー。」
スタートしたのであった。
うさーラさんは飛ぶように見えなくなった。
アスかめさんはまだ5センチほどしか動いていない。
審判はつぶやくのであった。
大切なことをいえないままになってしまった。
この競争ではテレパシー能力を使うことが当然のこととして許されているのである。
まあ、ふたりともご両親からよく伝えられていることだろう。
この戦いは、うさぎ一族とかめ一族であれば、既にその記憶は遺伝子レベルで組み込まれているのである。
この戦いに勝つことはもう彼らにとって本能の一部といってよいのである。