「 宝さがし その一 」            

         


 ソーラさんとアスカさんがわたしに宝さがしごっこという遊びをやらないか?と誘ってきた。

 えっ、一体どんなことするんだろう。と緊張する。

 あのふたりが言うんだからな。
どんな遊びだろうなー。

 ときどき、どんな風にふたりと遊んだらいいのかわからなくなることがある。

 きっとふたりにはふたりの遊びがあるんだろう。
ミニダックスの街で流行なのかもしれない。
 
 人間のわたしには、考え及びもつかない。
いつもふたりは、散歩へ行くときとか、食事の時の芸などは、人間でありご主人であるわたしに合わせてくれているのである。

 こんな風に、ふたりの遊びの中に入ってゆくことは、実はあまりないのである。

 遊び下手のわたしのために、ふたりが今日は、遊び方を提案してくれて誘ってくれたのである。

 ミニダックスの街では、こんな風に遊んでいるようだ。


 「じゃあ、はじめますよ。」

 「宝物を隠すから、探してね。いいよーっていうまでは、来ちゃだめですよ。宝物をさがして、それに触りながら、わたしたちふたりを見つけたら、ご主人の勝ちよ。こっそり、宝物をまたとられてしまったら、負けよ。」

 まず、鬼はわたしのようである。

「じゃあね、いいよって言うまで、目を閉じていなくてはだめですよ。じゃあ頑張ってねー。キャハハハハ。キャハハ……。」

 ふたりは、どこに隠れるのだろう。薄目を開けてのぞいて見よう。両手で覆った顔をあげてちょっとのぞいて見ようとした。

 すると、

 目の前に、ソーラさんがまだ立ている。

「ダメですよ。ご主人ーん。見ようとしてたでしょう。
10数える間はね。絶対見ちゃいけない約束なんですよ。
そしたら、もういいかいって聞くわけよ。ズルすると、100回鬼やらないとダメですよ。わかりましたか。」

 参ったなー。まだそんなとこにいたのかー。ハーア。

 すると、アスカさんも出てきて、
「あっ、ズルズル、ずるしてる。鬼100回ですよ。」
といわれてしまった。

 「ちゃんと、やって下さいよ。じゃあ、もう一回、キャハハハハ……。」

 わたしは、顔を両手で覆って下向きになって10数えた。

「1・2・3・4・5・6・7・8・9・ジュー……。もういいかいー。」

「もういいよー。」

 ふたりの声がする。ベランダのほうからと、そしてゲージの方からだ。
きっとそのあたりに隠れているのだろう。

 宝物はなんだろう。ふたりの宝物って、一体?

 みると、観葉植物の台の脚の根元の陰にホネのかたちをした犬用のチューインガムが四分の一ほど端の方が見えて置いてある。

 あんなところに、ホネガムが置いてあるなー。
どうしたんだろう。
えっ、まさか、あれって、隠してあったりするんだろうか。

 あんなの隠した内にはいらない。ばればれだぞー。

 でもあれかなー。プっ。なんだよー。宝物ってあれ。げっ。

 そのホネガムをまず拾ってみる。
こんなものでも、ふたりには、きっとすごいご馳走なんだろうなー。
まさしく宝物なんだろう。

 拾い上げたホネガムをくりくりっと指先でまわしてみた。
人間のわたしには、こんな固いものを飽きずによく噛んでいるものだと思える。ふーん。

 さて、
「おーイ。」
と呼んでみる。

 「…………」

返事がない。
まあ、そうでしょう。
隠れてるんだからな。

 でもこっちの方で声がしてたなー。
せまい場所だし、隠れるといてもそんなには隠れる場所もないはずだ。
ベランダをのぞく。いない。
 よーく見ると、
外用の犬小屋のかげから、茶色いシッポの先がちょっと見えている。