ソーラさんとアスカさんののん気な一日

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ー 第三部:SF未来編(3) −


♪ BGM_ch-18_minna_daisuki_main_story ♪ にどうぞ。


2009年1月6日(火)

ソーラとアスカ(71)
「目覚め。ハルさんに会う」

目が覚めたとき、とても爽やかだった。

「学校に遅れるよ」

といって母ちゃんの声に起こされる。でも、マキアスは、

「もう少しだけ」

と言ってまだ布団にかじりついている。
テーブルには、炊き立てのごはんと温かなお味噌汁が湯気をあげている。

春先。寒くなく、暑くもない。

おしっこをして、顔を洗わないといけない。
冷たい水はいやだなー。でも洗ったあとからだが少しホカホカする。

食事も終わり、出かける前に服を着替える。

お気に入りヨットの絵柄のシャツがいい。
真ん中に大きな時計のマークが入ったのは、ちょっと派手なのではずかしい。カッコつけているように友達から思われるかもしれない。

こんな服はいやだ。と母ちゃんに文句を言う。ヨットの柄の服じゃなけりゃいやだ。
でも汚れて洗濯カゴに行っているので仕方ない。大きな時計マークの服を着るしかない。なんで洗っておかなかったのかと母ちゃんを責める。

長袖のシャツを中に着て、上から袖を通す。シャツが中で丸まってずり上がってしまう。

「わー気持悪い。早くー、早くー、なおしてよー」。

袖口がすごくいやな感じだ。早く何とかしてくれとまた母ちゃんに文句を言う。

時計マークのこんな服を着るからこんなことになるんだ。

甘えん坊のマキアスの平和な日々のはじまり。

ー ー ー ー。

あれっ、今、自分は家にいるんだよなー。学校に行かなくちゃ。でも、ぼくの小学校は遠いからバスに乗って行かなくちゃー。

あれっ、

ー ー でもバスに乗って出かけるのは仕事だったような気がする。

? ? ?

マキアスのマッキーさん、めざめたね。
オハヨ。

ここってけっこういいとだよね。
大切なひとたち、大切な時間に会えるからね。悪くないよね。
あーっ、変じゃないよ。それでぜんぜんOKよん。

へー、そうなんだー。
そう言う君は、ハルさんじゃないかー。
うわー、久しぶりだなー。何年ぶりだろう。元気だったー。

もー、元気元気ピンピンよん。

前に「脳だけ人間」になったって聞いたけど、なーんだぜんぜん変わらないねー。前より若くなったみたい。いくつになるんだっけか。ハルさん。

まあ、相変わらずマッキーさんよりちょい上だよ。

ここにはね、けっこう知り合いも来てるよ。マダムアスカにソーラお嬢、知ってるよね。ホント昔と変わらないよ。





2009年1月9日(金)

ソーラとアスカ(72)
「最新の『脳だけ人間』」

アスカさんとソーラさんも来とるよ。

「 すごく懐かしいような、だけど思い出せないような。はじめて聞くような。不思議な気持がするなー?」

それにー、もうちーっと慣れたら、誰にでも会いに行けるんよ。簡単なんよー。
みんなのことがなんでもよー分かるちよ。
だから、うちもマッキーさんのこと、ときどーきのぞきに行っとったちよー。
ついでにちーとサービスもしとったけんねー。

「そうそう、なんかときどきいいことが起こるから、不思議だなーと思ってた。ハルさんの仕業か。へー、すごいね。」

うちみたいなともたちがいたら、アチラでは怖いものなしっちよ。
でもなー、うちらには公平性とか守秘義務ちゅうのがあるっちよ。あんまり身内や友達ばっかりえこひいきしたらいけんことになっとるんよ。うちらは聖職者やからね。
今は、まだ分からんかも知れんけんどなー。うちらにはそんだけ力が与えられとるとよ。
これからうちがなんでもわからんこと、教えてあげるけんね。

「これからー?」

最初はびっくりするとよ。
ほーんとに、すごかー、すごかとよー。何でもできるとよ。スーパーマンみたいになってしもうたごとある。
でもなー、うちらは、誰でも、みーんな出来るんよ。それが当たり前なんよ。
あんまり言うてしもたら、つまらんね。ちーとずつ分かるけん。おたのしみにっちことやね。

「 ハルさん、何だか、話がよくわからないなー。まあ、ハルさんに久しぶりに会えたのはうれしいけど。しばらく一緒にいるようなこと言ってるよね。うちに帰らなくて、いいの。仕事もあるでしょ。? ? ? 」


おーい、

だんなー。
だんなー。
だ・ん・な・!

どこからか声が聞こえる。
空からか、地面からか、水平線からか。
だんな、おめざめかい。気分はどうでい。よっ、だんな。
わるかんだろ。俺だよおれ。グラサンのー。
どんなもんでー、よっー。もうバッチグーよ。まかせとけっ、てなもんよー。
マザーボードは最新、人工血管コネクターも新素材。全部ピカピカの最先端でー。
だんな、もう1000年なんて余裕だぜ。へでもねーや。朝飯前。
おりゃー、やっぱり天才だな。
ガハハハハー、
ガハハハハー、
ガハハハーハーア。
「 なんか、笑い声がやけに響くんだけどー。」

グラサンじいの脳医者の再来。彼のご機嫌な笑い声がマキアスの世界一杯にこだます。

うわーー。





2009年1月11日(日)

ソーラとアスカ(73)
「『脳だけ人間』研修」

マッキーさん、だいぶいい感じになっとるねー。もーちーとやん。

そこんとこはなー。そこは、こう考えてー、こういくんよ。
そこはしっかりおさえるけど、ここはなー、一気に行かなーいけんのよ。しきり直すとえらい手間かかるんよ。
まあー、いろいろためしてやってみんとな。やっぱりな、自分でやってみんとコツが掴めんとよ。
あっ、
そこはな、ほっときーっち。ほっといたらいいんよ。
イーイっち言いいよろーがー。そこは、ほっとかんといけんとよ。
かまったらいかーんちいいよろうも。

「なかなか難しいもんだねー。」

うちはな、あんまりうるさく言わん方なんよ。口数は少なく、じーっと見守るタイプなんよー。マッキーさん、うちが担当でよかったなー。
ほんとはなー、もーっときびしいとよー。
ソーラさんなんかな、アスカさんの指導がきびしー言うてな、ロッカーの陰で泣いとったんよー。もう「脳だけ人間」やめるーってな。
でもな、そう言うてもなー。もう「脳だけ」になってしもとるとよ。どげんもこげんもならんとよ。

「そう言えばー、もう『脳だけ人間』になってしまったんだよね。ぜんぜん気付かなかったけどー。と言うことは、やっぱり『脳だけ』なんだよねー。ぜんぜんそんな感じしないけどー。」

はじめはな、ちーとさびしい気もするかも知れんね。でもなー、うちらにはなーそんなうじうじしてるヒマはないんよ。

「そうだね。あー、でもやっぱり『脳だけ』なんだ。まーいいか。小さなことは気にしない。」

うちらはな、もうあともどりは出来んとよ。修行はな、30年。一人前になるには時間かかるけどなー、うちらその先1000歳まで現役っちよ。

ちーとくらい失敗してもなー、その分、後で活躍してな取り返したらいいんよ。
だいたい「脳だけ人間」修行時代にはなー、みんなえらい失敗やらかしてるんよ。
まあー、惑星基地三つぐらいは潰すんととちがうやろか。

「まさかー。そんなことってあるのかな。」

そう思うやろー。でもなー、その信じられんことが起こるとよ。ひとごとやないんよ。

でもな失敗してはじめてその大切さが本当にわかるとよ。

まあマッキーさん、神経ずぶとそうやから、惑星基地五つくらいは潰すかも知れんね。フォローしがいがありそうやね。うちも覚悟しとかないけんね。

えへへへへー。

「あははははー」

マッキーさん、そこ笑ろたらいかーん。






2009年1月14日(水)

ソーラとアスカ(74)
「『脳だけ人間』マキアスの日々」

月日の過ぎるのは早いものだ。

マキアスが「脳だけ人間」になり、ハルさんに再会し、ハル先輩のお世話になり、厳しくも、またたのしかった研修の日々も今は昔といっていい。

研修はまず自分が「脳だけ人間」になったと言うことにちゃんと気付き自覚をもつことが基本だが、そのことを本当の意味で真に自覚することは、一番大事で、むずかしいことだった。

ハルさんは、けっこう軽い様にふるまっているが、そこのところはさすがと思ってしまう瞬間がある。

本当に、いろいろなことが出来るので、自分でも驚く。
しかし、その力をフルに使って、スパーコンピュータを中心に仲間の「脳だけ人間」たちと組んで課題に取り組んでみれば、他の仲間の力の使い方やアプローチにはいつも感心させられる。少しいろいろ出来るようになったと思うけどまだまだ。

マキアスは「脳だけ人間」の道を選んだが、マキアスより年代が上の人たちは、まだ「脳だけ人間」のシステムが地球全体に行き渡ってはいなかった。

また、マキアスの同年代でもまだまだ「脳だけ人間」になる人は少なかった。

あれから100年と言う時間が過ぎている。
「脳だけ人間」にならなかった上の年代ひとたちや同期の仲間たちは、当然、すでに450歳を越えている。オリジナルの身体のままでで、食べて眠って身体を動かして人生を謳歌した。
あるものは友達と時間を過ごし大いにたのしんだ。
またあるものは、目標を目指して努力して実現した。
それぞれに、そのひとらしく、身体を使って動き、触り、感じ、疲れ、頑張り、そのひとだけの人生の時間を過ごした。

そして、さすがに450歳を越えると、多くの友や知り合いがー、
そうー、残念だがー

去っていったーー。

マキアスはと言えば、湖のほとりMDエリアのスーパーコンピュータつき「脳だけ人間」としての勤務に配属となり、忙しい日々を歩んでいた。
「脳だけ人間」であることを知り、「脳だけ人間」としてやるべきことがやっと分かって来て、また「脳だけ人間」としてやらなければならないことにも気付きはじめて今日このごろ。

ハルさんが言ったように、マキアスは研修中に惑星基地を三つ潰したが、さいわい発見と対策が迅速で、みんな早く逃げたので、損失は多大だが犠牲者はでなかった。それもこれもハルさんのおかげだ。

3408年現在、三割の人が350歳の誕生日に「脳だけ人間」の道を選ぶ。





2009年1月17日(土)

ソーラとアスカ(75)
「究極の一石二鳥、究極のロシアンルーレット」

地球環境の破壊は、地球みんなの政府の必死の努力にもかかわらず、じわりじわりと進んでいた。
これでも、食い止めるどころか、回復を目指して猛然と努力していたのだ。

環境を守るための規則に違反するものはきびしく対処された。コンピュータは人間を裁く判断を下すことは出来ないが、「脳だけ人間」たちには可能だ。
そして「脳だけ人間」たちは、大変きびしい見方をしていた。

やむなし!

仕方ないね!

ごめーん、恨みっこなーし!

実は、この「脳だけ人間」システムは、地球環境にやさしいと言うのはいいがー。
それこそが本当は、裏の、真の目的ではないのか?
と言うまことしやかなウワサは以前からある。

確に、ひとり当たりの酸素消費量と環境への負担が効率的と言うの真実ではある。

しかし、「脳だけ人間」たちにしてみれば、高い志と地球と人類を守る犠牲的精神によっている訳だから、そういう心ないことは、冗談でも言わないでくれと抗議している。

そんな訳で、「脳だけ人間」たちは環境保護の法規の違反者には、非情なのだ。

温暖化を防ぎ、種の絶滅を防ぎ、地球を千年後、一万年後の人類たちにバトンタッチしてゆかなければならない。

まあ、そんな訳で、人間たちをドームに押し込め、それをひとまとまりにして、宇宙へ向けて旅立つ日が、いつか順番ロシアンルーレットでやって来る。

人類の未来への可能性の追求であり、地球を守る唯一の方法。究極の一石二鳥。

だけれども、宇宙は不安でいっぱいだ。
この一石二鳥システムが開始されてまだ300年足らず。人類の未来をのせた宇宙船たちは、宇宙のそれぞれの方向の空間へ進んでいる。年間に10艘。300年間で3000艘。だいたい一艘に10万人乗り込む。

当然みんな石橋をたたいて慎重に進んでいる。
一石二鳥システムは、けして自滅的な行為ではない。
ないがしかし、やはりこれは人類にとっての賭けであることに間違いはない。

ある船の運命は未来に繋がっているだろう。
だがある船の運命は暗い暗い真っ暗な漆黒の宇宙の深淵に向かっているのかも知れない。

そのことは紛れもない事実だ。かと言って地球にとどまれば人類は安泰か。いや、けしてそんなこともない。わかっちゃーいるけれどー。願やくば、宇宙への旅立ちは出来るだけ、後回しにしてほしい。と、どの都市ドームの人達も思うところなのでした。





2009年1月28日(水)

ソーラとアスカ(76)
「シュミレーションゲーム、お昼ねごっこ」

「脳だけ人間」マキアスの日々は忙しい。勉強させられることばかり。いろいろなことに出くわして、今更ながらに「そう言うことだったのかー」とこれまでにここを通って行った先人達の知恵や努力や想いに気付く。いろいろなプロジェクトをこなし、毎日は夢のように過ぎてゆく。

「脳だけ人間」が永く生きるには理由がある。「脳だけ人間」の覚醒サイクルは、月に数日だけ。月のサイクルに合わせている。満月の頃に目覚める者もいるし、新月の頃に目覚める者もいる。だから睡眠時間たっぷり。脳細胞の消耗もすくない。

あるプロジェクトの担当になったときは、逆に三日間は眠らない。2、3時間も眠ったかなと思えば、またバリバリに覚醒していて、60時間くらいは眠らない。

けれど普段は月に一回目覚めるだけ。
マキアスは目覚めた日には、マンションから出勤。通勤には約1時間かかる。

職場に着くと朝のミーティングがある。

まあ「脳だけ人間」の場合は、情報交換といってもスーパーコンピュータと身近な友達なのだから実に話す必要など何もない。ファイル形式で受取りひらけば、たちどころに、状況がインプットされて、たちまちに物語の渦中に投げ込まれるのである。
実のところ、「脳だけ人間」たちの引き継ぎはこのように一瞬の作業なのだ。

朝のミーティングで話をすると言っても、まあほとんどがキャッチボールかバトミントンの羽つきか風船バレーみたいなものでコミュニケーション。

それが終われば、ちょっとデスクにむかいお仕事。あきるとみんなでお茶を飲んでー、職場の親睦をはかる。
そうしているうちに昼休みになり、食事。 昼休みは、たっぷりあるので、ゆっくりとお弁当を食べても時間がある。

暇なのでちょっと趣きのある遊びをする。

「おひるねごっこ」だ。

大した遊びではない。本当に昼寝をしたのでは何にもならない。これは緻密に再現されたシュミレーションゲーム。

時代は21世紀。古風な家が建っている。アスファルトの道にはバスがときどき行き来している。道の向こう側にはたんぼが広がる。小さな家の二階のベランダで、ミニダックスの祖先の姿になって、その気持のよいベランダでのへっとする。

ただただ静かに風の音、鳥の声、バスの過ぎ去る音、子供たちが遊ぶ声を聞く。

シンプルだが「脳だけ人間」たちの間ではちょっとしたブームなのである。





2009年1月30日(金)

ソーラとアスカ(77)
「ショボーン氏からの知らせ」

湖のほとりMDエリアの「脳だけ人間」たちがいつものように「おひるねごっこ」にいそしんでいる。あるのん気な昼下がりのこと。

地球みんなの政府のSUSGADコンピュータつきの「脳だけ人間」の元祖、なんとあのショボーン氏からの直々の連絡が入った。

はーー、あのーー、はーー、そのーー、
たいへんー、えーー、申し訳ーーないのーですがー、はーあ。

あのー、そのー、えーと、すいませんがー。
どなたかー、ご在宅でしょうかー。 あーー、うーーん、でもなーー。こまっちゃったなー。はーあーあーあ。

「はい、こちらは湖のほとりMDエリアスーパーコンビュータひまわり。ひまわりコンピュータつきの「脳だけ人間」チーフのアスカです。

地球みんなの政府のスーパーコンピュータ。SUSGADコンピュータ。とてもおおきくて深い。直々にー。

ヤーポン地域のチーバセクトのそのまた一部の小さなエリアドームにわざわざ地球みんなの政府から直接連絡が入るなんてこれまでありえない。

湖のほとりMDエリア「脳だけ人間」チーフのアスカは、いぶかしげに応対する。しかし、ショボーン氏と聞いて少し懐かしくなった。

あっ、あのー、 おっ、おっと、お久しぶりでーす。あっ、アスカさん。ショっ、ショっ、ショボーンです。こっ、こっ、こんにちわー。

「 あっ、お久しぶりです。ずいぶんご無沙汰しています。お会い出来て懐かしいです。お元気でしたか。」

世界中にまだ「脳だけ人間」が少ないころ。
アスカさんが「脳だけ人間」の仲間に加わったころは、世界中にまだ100人も「脳だけ人間」はいなかった。
それもショボーン氏はなにせ「脳だけ人間」の元祖。だから、先輩として「『脳だけ人間』の心得」とか「『脳だけ人間』の役割」とか、いろいろ話をしてみんなで聞いたり、直接飲み会でも話したり、よく知った仲間でもある。

あのー、す、すいませんねー。あっ、アスカさんもお変わりなくて、おっ、お美しいですー。はー、いやー、すいません。

「おほほほ、また、そんなー、とっ、とんでもございませんわ。おほほほほ。」

いえー、あのー、そんなー。ほっ、ほんとうのことを、つっ、つい、しゃべってしまいましたー。すっ、すみませーん。

「またまた、ショボーンさんたら、相変わらずお上手。それとも正直なのかしら。おほほほほ。」

えへへへへー。はーあ、すいましぇん。





2009年2月3日(火)

ソーラとアスカ(78)
「つ、つ、つ、ついにー」

あのー、 ところでー、アスカチーフ。

ショボーン氏とアスカさんの絶えることのない二人の懐かしさを讃えあう会話の傍らで、ソーラさんは我に返る。

「そうそう、そう言えばー」

アスカさんもあることに気付く。

ショボーン氏が何故今日久しぶりに、こんな一地方エリアの人口10万程度の小さなドームに直接にコンタクトを取って来たのか、と言う肝心のことである。

「そう言えばー、ショボーンさん。今日はどのようなご用でしょう。わざわざお久しぶりにこうしてお会い出来るのですもの。何か大切なご用があるのでしょう。」

あっ、そうでしたー。すいませんー。いやー。

じっ、実はー。
いえー、そのー、それほどー、とりたてて、用事と言うほどのこともないんですー。すいません。

「あら、まあ。何か特別に大切なご用事がお有りかとー。」

じっ、じっ、実はー。
いやー、でもなー。やっぱりー、うーん。ちょっとなー。なんでもないです。すいません。

「なーんだ。じゃーやっぱり、ショボーンさんは私のこと懐かしくて、顔がみたくなっちゃったーってことなのね。」

じっ、じっ、じっ、実はー。
はーあ、はいー、まあー、そのー。
そうなんです。

「あー、びっくりしましたわ。そんなことなら、いつでも会いに来てくだされば、うちのメンバーにとっても大変勉強になります。ショボーンさんはなんといっても本家本元。私達の大先輩『脳だけ人間』の元祖ですものね。」

じっ、じっ、じっ、じっ、実実はー。
そのー、えーと、まあ、そうなんですけど。

「まー、本当に変わらずに照れ屋さんですのね。おほほほほ。ショボーンさんの勇気ある第一歩がなかったら、今の地球はあり得ませんでしたもの。」

じっ、じっ、じっ、じっ、じっ、実はー、あのー、えー、いやー、なんと言うかー。
まあ、そうなんです。偶然なっちゃったなら、ちゃんとやらなきゃ、申し訳ないなー、なんて。すいませんねー。

「本当に、ご謙遜ばかり。ノーベル賞をいただけないのが不思議なくらい。私いつもそう思っているんですの。本当に。おほほほ。」

じっ、じっ、じっ、じっ、じっ、じっ、実はー。
あのー、えー、いやー、そのー、なんと言うかー。そう言うことではなくてー。
いやーまあー、そうなんですねー。うーんすいませんねー。


そのとき、
テレビの映像が。

パッ、パッ、パッ、
パンパカパーン♪






2009年2月8日(日)

ソーラとアスカ(79)
「旅立ちのとき」

ショボーンさんとアスカチーフの話の途中、重大ニュースがテレビから飛込んできた。

パンパカパーン♪
パンパカパーン♪

そして、ディスプレーの向側でくす玉がー

パッァアーーン

と割れて、ひらひらと五色のリボンが揺れ、はらはらと紙吹雪が舞う。

3508年11月21日。穏やかな昼下がりの事だった。

【ニュース速報】
全世界、地球全ての人々の注目を集めている運命のルーレット。
只今、地球みんなの政府の発表によりますと、3511年に宇宙へ飛び立つ10ヶ所のエリアドーム都市が本日決定したとのことです。

地球みんなの政府のスーパーコンピュータSUSGADコンピュータ(さすがだ)による厳正にして公平なるまじりっけなしの抽選によりまして、先程決定されました。

SUSGADコンピュータにある「 ハッピーマッキーラッキールーレット」はみなさん既によくご存じのことでしょう。今回もこのルーレット回路によりまして選ばれた10ヶ所のエリアドーム都市は以下の通り。

ー ー ー ー

今回、ヤーポン地域からは、チーバセクトから「湖のほとりMDエリアドーム」が選ばれました。
お祝い申し上げるとともに厳粛なる想いを込めまして、ヤーポン地域すべてのみなさんで応援のエールを贈りたいと思います。

湖のほとりMDエリアのみなさーん

ファイト、ファイト、ファイトーーッ、

レッツ、ゴーゴーゴーーッオ。

地球の未来を、明日を救ってください。
みなさんは、地球みんなの、全人類の夢、光、明日、希望です。

発表を受けましてヤーポン地域では、行政及び全地域民の総力をあげまして3年後の宇宙への旅立ちに向けて、万全なる準備に入ります。

この300年間に宇宙への旅立った船は3000艚。そのノウハウは全地球的規模でバックアップされ、ヤーポン地域の独自性も生かされることでしょう。
全力をあげまして、湖のほとりMDエリアのみなさんを応援してまいりましょう。

また、本日より湖のほとりMDエリアドームは閉鎖されました。現在エリアドーム内にお住まいの方及び滞在中の方は、ドーム内から出ることはできません。故郷証明と滞在履歴によりまして三年以上湖のほとりMDに暮らした方は、

もう、ここが、

あなたの故郷です。

運命をともにしていただきます。

あなたの力を、
地球の運命を担い宇宙へ、未来へ。

以上ニュース速報をお伝えしました。




2009年2月12日(木)

ソーラとアスカ(80)
「…と言う訳でー」

地球みんなの政府の中枢コンピュータ、サスガダ(SUSGAD)コンピュータのハッピーマッキーラッキールーレットがくるくるっと回り、

パンパカパーン♪の
くす玉がパーーンで

湖のほとりMDエリアドームも3511年宇宙へ旅立つひとつとして決定。

「 おっと、ごめんなさい」で、
エリアドームは完全封鎖。

と言うことでー、

アスカチーフもソーラさんも固まってしまった。
開いた口が塞がらない。びっくりもしたがー。

ショボーンめ。うだうだぬかしやがって結局こういうことかい。はっきり、いったらどうなんだ。こういうのが一番ひとの反感を買うことになるんだぞ。

アスカチーフは、頭にきている。

「ショボーンさん、ショボーンさんは、このことを私たちに伝えるために、今日連絡されて来たのでしょう。」

すいませんねー。いやー、あのー、なんていうかー。

すいませんだー、当たり前だー、あやまんじゃねーよ。ショボーンめ。にゃろー。

アスカさんの怒りは収まらない。

「だったらちゃんとおしゃってくださらないとー、私たちびっくら、ぶったまげてしまうじゃーありませんの。」

いやー、そのー、なんというかー、それだけじゃーないというかー、あのー、いえー、すいません。

だーかーらー、あやまるなっていってんだろーが。それに、なにー、まさか他にもなんかあんじゃねーだろうな。ショボ。にゃろめ。

「今、何か、他にも連絡したいことがあるようにおっしゃいませんでしたか。」

いやー、うーん、すいませんねー。どうもー。

… … …。

申し訳なさそうに、ショボーンさんが通信ようディスプレーからフェードアウトしていった。

あれっ、いつの間に、
ショボーンのやつ
いねーじゃねーか。

いればいるで腹が立つが、いなくなればいなくなったで余計に腹が立つアスカチーフだった。

ソーラさんも腹が立っているが、アスカさんがあまりにショボーンさんを悪く言うので、相槌をうちながらも、そう言う役割だし、ルーレットで決まった訳だしー、仕方ない気もする。などとちょっと気の毒になったりする。

この重要な決定の連絡は、ヤーポン地域の行政、チーバセクト知事、そしてMDエリアの市長に行政ルートを通じてまず連絡がなされた。

そして特別ダイレクトのコンピュータつき「脳だけ人間」たちには、ショボーン氏を通じて連絡がなされたのだった。






2009年2月19日(木)

ソーラとアスカ(81)
「じっ、じっ、実はー」

湖のほとりMDエリアドームは、3511年11月に宇宙へ船出することに決まった。

あの日から、日々の全ては動きはじめたのだった。

おおきな、おおきな舟、スペースシップ「ソーラー」は全ての力を注いで造船された。

使用される光ファイバーの毛先の一本一本、集積回路の貝のような一粒一粒、超合金の板の一枚一枚、透過フィルムの一片一片、化学処理に使う酵母チップの一個一個。すべてにおいて素材にこだわる。手抜きなし。分量のごまかしなし。リベートなし、純度100%、完全な調合バランス、精度完璧、不良点検完全ゼロ。すべての素材は、完璧な技術の上に、良心と、何よりも情熱によって支えられ、準備された。

その完全な素材を十分に生かし、ひとつひとつ、丁寧に、きっちりと、情熱と忍耐と、そして職人肌の技術者たちのプライドをかけて、おおきな、おおきな舟、宇宙船スペースシップ「ソーラー」の組み立て作業は進められて行った。

まるで樹齢千年を越える木材の息吹を感じながらギターを作り出してゆくルシアーの作業のよいだ。

そんなところにこだわって、全体のバランスからみて、なにか役に立つのだろうか。普通には分からないが、職人たちはうなずくのだった。彼らには、それだけの宇宙船づくりの経験があり、そのこだわりが許されているて、新しいアイデアも取り入れられている。

おおいなる、巨大を極めた舟なのだけれど、その造船作業工程はまさにナノレベルで組あげられてゆく。無数のナノロボットたちが動き、それを完全にコントロールし、点検している。

ヤーポン地域の威信にかけて、私たちの仲間を乗せた舟は、安全に、宇宙の果てまでもたどり着き、地球と人類を滅亡から救い、そしての未来の光と希望へと続いている。きっと新たな道を、可能性を探してだしてくれる。

その大役を担い、宇宙の大海原に旅立つ私たちの仲間たちに、せめてものはなむけにすばらしい宇宙船をつくるのである。

その大昔1600年頃の大航海時代にコロンブスは見知らぬ大地にたどり着き、そこではインディオに出会った。

私たちの仲間が乗る舟も、何万光年も宇宙の旅を続けて、銀河の向こう、何か新しいものに出会うかも知れない。いや、きっと出会える。出会うことだろう。

宇宙への航海の無事と目的の成就を祈り、ヤーポン地域の人たちは、総力をあげて、おおいなる舟スペースシップ「 ソーラー」を作り上げた。





2009年2月23日(月)

ソーラとアスカ(82)
「慌ただしい日々」

湖のほとりMDエリアドームの人々は、おおいなる舟、スペースシップソーラーに乗り込んで宇宙空間、いぬいぬ座のHWーDK8星雲の空間へ向かうことになる。

湖のほとりMDに家族が揃っているひとは、みんなそろって宇宙の旅にむかう。しかし、子育て中の短い期間をのぞいて、そのようにメンバーがそろっていることはまれなこと。

だいたいは、両親や兄弟やが世界の中バラバラのエリアに住む。
友達でさえ離れて暮らすのは当たり前。

その場合、呼び寄せて一緒にゆくことは許されている。

しかし、その逆は許されていない。


あるものは一緒にゆく道を選んだ。
また、あるものは、それぞれの事情により、別れの道を選んだ。

一緒にゆくのは、うれしいとも言えるが、その人を、残る人々と結果的に引き離してしまうことを思うと、果たしてそれがうれしいことなのだろうかと思う。

別れの道を選んだひとは、少し残念だと思うのだけれど、残る人たちとともにあってくれると思えば心安らぐ気持ちもする。


いずれにしてもー、
誰もが、必ず、

何かを残してー、
何かを道連れにー、

何かを捨ててー、
何かを抱えたままでー、

旅旅立つことになる。

いつまでも、このまま一緒に地球にあって、会いたくなったらいつでも会える、そうありたいとは思う。
しかし、今となっては、それも許されない。かなわぬことである。
旅立ちのときは、刻一刻と近付いている。

慌ただしく過ぎてゆく日々の中で、会えるひとには会い、のこされた大切な時間を共に過ごして置きたいと思うのでした。

MDエリアの封鎖は実際として続いているので、久しぶりに会うといっても限られたエリアとなる。しかし、このラウンジからは、広々と広がる美しい湖を見渡すことが出来る。また、水辺に降りて、魚釣りをしたり、水遊びをしたり、散策することは許されている。美しい自然の中、夢中になって、あっと言う間に一日が過ぎてゆく。

人々が旅立ちの準備で慌ただしい日々をおくる中、思わぬお客がやって来た。

そのお客は、ロボット姿。公共の円盤型移動装置(クオーク理論で半重力を利用)とリニアバスを乗り継いで、のっしのっしと歩いて、はるばるとやって来た。

一部の特別な「脳だけ人間」にだけ、専用のモビルスーツが許されている。それ身体を使って、許可をもらって出かけることが出来る。





2009年3月5日(木)

ソーラとアスカ(83)
「お客さんがやってきた」

湖のほとりMDエリアでは、おおいなる舟スペースシップソーラーの建造や旅立ちの準備に追われていた。
残る人々と別れをするのもまた大切な準備のひとつ。

慌ただしい日々、このくそ忙しい中、お客さんがやって来たのでした。
エリアドームは現在封鎖中。にもかかわらず、このお客さんはスイスイと抜けてきた。ロボット姿でのっしのっしとやってきた。
なんだかぎこちない歩き方だが、ただものでなさそう。ロボット姿のこのひとは、「脳だけ人間」だ。
「脳だけ人間」が移動するときは、大概は、培養槽を後生大事に頑丈なケースに納められて抱えられ万全の体制で運ばれる。
たまに、特別な「脳だけ人間」にだけロボット姿も許されてはいる。

そもそも「脳だけ人間」が移動することはめったにない。
別に移動する必要はないのだから。ネットワークを通じてどこへでも行くことが出来る。
それに、移動中に何かの事故にあわないとも限らない。転んだりして、脳を入れた透明な培養カプセルを打ったりしたら大変。
まあ転ぶことなどありえない。このロボット姿は歩き方こそなんだか不安定で、レトロなデザインだが、いざとなるとなかなか安全に出来ていて、見掛けによらない。

別に見せる必要もないと思うのだけれどー。丁度ひとの頭ほどの透明な素材のコンパクトな培養槽、と言うよりはカプセル容器の中に、脳の本体が見えている。
それは、まる見と言うのではなくて、ガードのフードや覆いのカバーや帽子の間から、ときどき「チラッと」見え隠れするのである。

だいたい脳を入れた透明なカプセル容器をわざわざ外部にさらさなくてもいいんじゃないか。第一に物騒な気がする。何かにぶつけないとも限らない。カプセルが汚れたら拭かなくちゃいけない。雨や水しぶきにぬれることもある。

大事な脳のカプセルを、人間で言う頭の位置、わざわざ一番てっぺんに据えなくもいい気がする。

まあ、太陽の光が丁度よくカプセルに差し込むと、直接脳に当たって気持ちがいいらしい。

チラッと見える。
あっ、脳だよ、脳。あんなにシワシワだよ。見事にふっくらまるいねー。

何だか脳を直に見るのも恥ずかしい。
でも、見てはいけない。ジロジロと見てはいけない。と思えば思うほど、なおさら見たくなるものだ。
見慣れてくれば当たり前になるが、それまでどうも落ち着かない感じだ。

これも斬新なファッションだろう。





2009年3月12日(木)

ソーラとアスカ(84)
「あっ、あのー、そのー、えーと、ご一緒させていただいても…」

チラッ、チラッと脳が見え隠れする、究極のチラリズム最新モードフッションのレトロなロボット姿のベリーインポータントな「脳だけ人間」のこのひと、

さて誰でしょう。
あっ、あっ、あのー、ちょっと伺いたいのですがー。

こっ、こっ。こちらは、たしかー、湖のほとりMDエリア…ですよね。もしかしてー。

ひっ、ひっ、ひまわりコンピュータつきのー、あっ、アスカチーフに、あー、会いたいです。

突然現れた、風変わりなベリーインポータントな「脳だけ人間」を、封鎖ゲートの市の職員たちは、いぶかしげに見ていたが、その話ぶりにほっとしたのか、あっけにとられてしまった。あまり見慣れないので、脳がチラチラ見えるのも、気になって落ち着かない。許可IDはあるのでまったく問題ない。
市の職員の対応は丁寧になって親切に教えてくれたが、ひまわりコンピュータのあるセンター。一般のひとには「脳だけ人間」のいる場所なんてあまり分からない。MDエリアのスーパーコンピュータのある一画なのだろう。
実は、第一に、ショボーンこと、ショボさんが知らない訳がないのでした。ちょっと挨拶代わりに聞いただけ。


「あらまあ、ショボーンさんじゃーありませんの。あの日以来、お久しぶりですこと。突然ゲートまで来ているなんて、インターホンで聞いて、耳を疑いましたわ。もうー、ほんとーに、びっくらこきましたわ。このくそ忙しいのに。まーわざわざこんな遠くまで。それにー、まー突然なんですもの。」

アスカチーフの言葉の端々には、あの日いわれなき、八つ当たり的報復の刺がちりばめられている。

考えて見れば、相当のことがなければ、「脳だけ人間」が実際に移動する必要はないし、元祖ベリーインポータントなショボさんが直々にやって来る訳もうない。一体どうしたことだろうか。

あっ、あっ、あのー、そのー、たしかー、いえー、あのときー、なんていうかー、えーと、言い忘れたかも知れないんです。 いやー、そんな気がして来た感じですけどー。はー、うーん、確にー、何となく。

「はー、一体何を言い忘れたとおっしゃるのですか。まだ、この後に及んでー。いまさら一体何を、この上に。」
あきらかにアスカチーフはいらっとしている。

じっ、じっ、実はー、えーと、うーん、何て言うかー、そのー、いやー、ちょっと、言いにくいんですがー、そのー、あのー、実はー。

「 … 」






2009年3月16日(月)

ソーラとアスカ(85)
「なんだ、そう言うことね」

「 … 」

この期に及んでー。
アスカチーフは、あきれかえって言葉を失っている。

これはいけない。このままではまずい。

ショボさんも意を決して切り出した。

いっ、いっ、いっ、一緒に行こうかなー、何てー。

いっ、いっ、いや、もしも、ご迷惑でなければー。いやー。

ぜっ、ぜっ、是非、一緒に連れて行ってください。

おっ、おっ、お供いたします。

あー、まー、うーん、そんなー、訳ですー。すいませーん。

「 … 」

アスカチーフはまだ黙っているが、さっきの沈黙とは、全然意味が違うようだ。
と言うか、全然態度違う。

あの懐かしいショボさんがアスカチーフの中で、戻って来たのだった。


「あら、まあ、私ったら…。どうしましょう。とんだ思い違いをしておりましたわ。まあ、ほんとうに失礼なことばかり。早くおしゃってかださればいいのに…。ショボさんたら意地悪ですわ。まあ、本当に、もう。」

はー、じつはー、そのことをー、おっ、おっ、お話しなければーと思いつつ。


そう、ここに、湖のほとりMDエリアの大いなる旅立ちに向けて、「脳だけ人間」のショボーン氏ことショボさんがメンバーに加わることになった。

まあ、元祖だから、ある意味かなり高齢だ。800歳は越えている。まだまだ元気。
やはり、この湖のほとりMDエリアは、ショボさんの青春の1ページに思い出深い場所である。

また、スタッフのアスカチーフはじめ、ソーラさんとも、なじみ深いのだった。
経験豊富、地球みんなの政府やSUSGADコンピュータとも仲良し。なんせ「脳だけ人間」の元祖。世界最高長寿ナンバーワン。

湖のほとりMDエリアひまわりコンピュータつき「脳だけ人間」チームにとっては大歓迎、心強い。
またショボさんは、多くの仲間を宇宙に送り出して来た訳で、その責任もある。
何より、一度は自分この旅参加したいとも思っていた。

地球であんのんと日々を過ごし人類はじめて1000歳を迎えたとしても、いつかは限りある命。旅路に果てるもまた自分らしいと。

何より、この旅は人類の未来を託した大冒険の旅なのだ。

そのことを、MDのみんなは喜んでくれる。


ここには「脳だけ人間」たちが大勢いて、優秀で個性豊かな人材に恵まれている。大いなる旅立ちにとっては、一番大切なことである。
みんな活躍の機会を待っている。





2009年3月27日(金)

ソーラとアスカ(86)
「街角インタビュー」

【今日のニュース】

こちら湖のほとりMDエリア光テレビこがらし放送局。
私アナウンサーはコアラシと申します。

さて、3511年宇宙への旅立ちが決まって1年。今日は準備に忙しい、ここMDの街角に来ています。

街角、インタビュー!
さっそく街の声を聞いてみましょう。

あの、ちょっと待ってー! お忙しいところすいませんねー。お話伺えますかー。

発表から1年になりますねー。

ーご婦人ー
「あなたは、地球に残るんでしょ。いいわねー。だからそんなに呑気なのね。ほんとに呑気って言うのはいいわね。1年前までは呑気でいられたのに。でも、もう地球ともお別れ。宇宙に追い出されるのね。あー。」

今日は街の声をそのままリアルにお伝えしています。いやーこれは偽らざる声。最初から来ちゃいました。つらいなー。

ちなみにわたくしコアラシは、地元でございます。みなさんとご一緒に参りまーす。

あっ、あのっ、ちょっ、ちょっと、ちょっと待ってー。すいませんねー。

ーうらぶれ中年ー
「…いや…、仕事がね…。」

へっ、何かおっしゃいましたか。

「… 見つかったんだよ。いやー、ほんと、やれやれ…。」

よっ、よかった。おめでとうございます。

「なかなかね。長かったんですがー。この旅立ちで世の中忙しくなって景気がよくなってね。旅立ち景気さまさま。ありがたい。」

いやー。ほんとーによかった。でもなー、何かなー、ちょっと切ないんですけどー。
大いなる旅立ちなんだぞー。宇宙に行っちまうんだぞー。
こんなもんかい。どうなってんだーー。

あっ、大変失礼いたしました。生放送オンエア中でしたー。
……、えっ、えへん♪

お話伺えますかー。
ー男の子ー
「 彼女は、地球に、残るって。ずいぶん話もしましたがー。結論は変わらずー。連れないなーっ。参りました。」

あっやー、そいつぁー痛い!。本当にお気の毒さま。きっと宇宙で新しい恋に出会うかも知れませんよ。

ー女の子ー
「 彼氏がね、一緒に来てくれるって言ってくれました。だから、3511年宇宙船の中で結婚したいです。準備に毎日忙しいし、HWDK8銀河方面の宇宙空間についての勉強も彼氏と一緒にしてまーす。」

こういう話して聞けてよかったなー。宇宙船ソーラー第一号の宇宙船世代のベイビーも期待出来ますね。

以上、街角インタビューはこがらし放送局突撃アナ、コアラシでした。






2009年4月1日(水)

ソーラとアスカ(87)
「こうでねえと(コーディネート)」

ショボさんがやって来たことをMDのみんなは喜んでいる。
ここには「脳だけ人間」たちが大勢いる。みんな優秀で個性豊かだ。このことは旅立ちにとって一番大切なことだ。

旅立ちに向けて、「脳だけ人間」たちのチーム編成がなされた。

このチーム編成は、3人から8人前後の単位で組まれる。そのひとのキャラクターや相性、得意分野などをもとに、コーディネート係があーでもない、こーでもない。
やっぱりここは、

コーディネート(こうでないと…)

といいながら、複数の合意によってきめてゆく。

ある「脳だけ人間」に対するそれぞれの「 こうでねえと」 担当者の見方がちがう。
この「脳だけ人間」は社交的で協調性がある。と見る見方がある一方、ひとの話を聞かないし頑固だが、意思の強さはも必要だ。などなど。
また、相性もこの人とこの人を組み合わせれば、素晴らしいパフォーマンスを引き出せそうだ。
この組み合わせでは、平凡だが、ここにこのキャラが加わることで、まったく別物の素晴らしさを発揮すると言うことはよくあることだ。

そんな訳で、「こうでねえと」担当者の作るグループ分けは、ひとつの運命を決める大切な作品と言える。それを持ち寄って話を合うなかで、やはりピタリと意見が一致する部分も多い。

そうそう、ここは、

コーディネート。

長く、みんなに接している担当者ほど、一致して来る。

当然ひまわりコンピュータは、縦横無尽に「脳だけ人間」たちのデータを提供してくれる。
「脳だけ人間」になる前の人生、「脳だけ人間」になるときの想い、「脳だけ人間」になってからのあり方。

でも最後は、「脳だけ人間」同士の話した印象で決めてゆくのが担当者であり、必ずいろいろな角度から考えられるように合議により決めてゆく。

ひとは不思議なもので、厳しいひとにも一瞬のやさしさがあり、やさしいひとにも一片の厳しさがある。必ずその反面を持ち合わせている。そのことの意味すること、大切さははかり知れない。

マキアスとハルは同じテーブルになった。
アスカさん、ソーラさん、ショボさんも。
あの脳医者のグラサンじいも「脳だけ人間」になったとは聞いていたが、ここて会うとはー。
そして、新人のコシ・トモローくんとヒマワ・リーお嬢。ふたりとも元気な研修終わったばかり。

この8人は、この旅で、大変大切なポジションのひとつを担うことになる。




2009年4月7日(火)

ソーラとアスカ(88)
「アスカチームの八人衆」

アスカ、ソーラ、マキアス、ハル、ショボ、グラサンじい、とうもろこし君(トモロー・コシ)、ひまわりさん(ヒマワ・リー)。この8人がひとつのチームとなった。

それまで、別々の場所にいて、ネットワーク上だけで繋がっていた「脳だけ人間」たちが、チーム編成発表後、実際に場所を移動し、ひとつのテーブル、ひとつのユニットにおさめられた。
このとき、ひまわりコンピュータ(HMWR)つきの約1800人の「脳だけ人間」たちが一斉に移動。保護ケースに納められて大切に、また効率よく、大勢の移動をスムーズに行った。
だから今回は、あのハラハラドキドキ、魅惑の脳チラロボット姿は見られなかった。
ショボさんも、アスカさん、ソーラさんのところにいたので、移動の必要はなかった。

さて、この8人がここで出会ったと言うのも何かの縁、運命と言うものだ。
歴史の中、こんな大切な時点にこうして居合わせると言うのは、壮大な地球の歴史の中でこの8人はどこかで繋がっていると考えた方がよい。
この8人のルーツをHMWRに聞いてみると、21世紀、ベランダ、ミニダックス、リズム、…、など謎めいたキーワードが浮かびあがるが定かではない。

そして今、地球の歴史は、壮大な宇宙の歴史に変わろうとしている。

「脳だけ人間」たちは、個々にパワーを持っている。この8人もそれぞれ、その持つパワーとユニークな特性によって集められたメンバーである。だから、パッと8人、いい感じで力を出し合えば、かなりのことが出来るはず。
そのチームワークが実は、宇宙船の意志を支えるシステムに繋がっており、その柱の一本になっていることはメンバーにも知らされていない。

8人は、しばらくの間それぞれに覚醒と休息のサイクルを、シンクロさせて過ごした。

同じ職場でデスクを並んでいるので、普段の様子が分かる。今日は機嫌がよさそうだ。なんか大変そうだ。やっかいな仕事を抱えているようだ。などなどー。
仕事の合間には、雑談も悪くない。

昼休みは、
ー宇宙に出たと言うのにー、
相変わらず。

ときどき星が瞬くくらいで、真っ暗で音もない宇宙空間が続いているだけ。暇だ。
そうそう、例のシュミレーションゲームの「お昼ねごっこ」も人気。
アスカチーフとソーラさんはだいたい昼休みはツルんで「のへー」っと、このシュミレーションゲームに没頭している。よく飽きないものだ。





2009年4月14日(火)

ソーラとアスカ(89)
「あっ、そうそう…」

あっ、そうそう。言忘れましたが、今、もうすでにスペースシップソーラーは、HWDK8銀河方面の空間に向かって宇宙空間を進んでいます。

半年ほど経ちました。だいぶ宇宙船での人々の暮らしも落ち着いてきました。
また、それと同時に何もかもが目新しかった宇宙船の生活が少し退屈に思えるときもあります。

スペースシップ(SS)ソーラーは、当然完全自給自足型。宇宙空間にある光エネルギーを蓄える。また、原子を構成する陽電子、そのまたさきのクオーク。それらの結合エネルギーを応用してエネルギーを取り出すのだから、無尽蔵だが、果てしない宇宙を進むには、まだまだ不満がある。

このエネルギーの変換こそがすべてをうみだす。自給自足の源。食糧も水も燃料も、いかに変換エネルギー効率を省エネ
出来るかの問題だ。

まあ水と二酸化炭素と酸素からあら不思議とパンが産まれる。昔のひとならそう思うことだろう。

また昔は夢の錬金術も可能だが、エネルギーが必要だ。それより、分解するときの変換エネルギーを得る方が貴重だ。

まあこのSSソーラー内部は広い。約18万人が暮らし、1800人の「脳だけ人間」たちが働いている。ミニダックスが2万匹のっている。

その他の動物をはじめ種々の生物たちや植物は、遺伝子保管。環境が適合すれば、たちどころに、地球のように、生命の楽園を再生することができるだろう。

みんな、まずは限りなく広い宇宙船内部の見学ツアーはやはりてくてくと健康的歩いて回るのがお勧め。 宇宙船の中枢ひまわりコンピュータを見たり、巨大なクオークエンジン、展望台からはHWDK8銀河が真ん中にとらえられて、小さく瞬いている。CHOコントロールプラント(空気と水と二酸化炭素を管理と生成ー宇宙ではなにより大切)、植物管理プラント、食物生産プラントなどなどたくさんみどころがあります。
まずSSソーラー内の船員=住人にとってやらなければならないことは、労働または学習です。なまけていてはいけません。
また、SSソーラーの船員=住人にとって最も必要なことは、それもまた労働です。
宇宙船の中にもちゃんとカレンダーがあり木曜と金曜と土曜と日曜が休み。
また、5月の連休は1ヶ月間休み。

なぜ仕事が義務であり必要なものかと言うと、仕事しないと、休みや連休がちっともたのしくないし、仕事のあとのビールおいしくないから、です。






2009年4月17日(金)

ソーラとアスカ(90)
「そう言えば、あれはどうなったんだっけー」

そうそう、そう言えば…。
忘れてましたが、これまで暮らしていたふるさと。湖のほとりMDエリアドーム。あとはどうなったのだろうか。気になる。

あれだけの都市を一体どうするのだろう。
もしかして、誰か他のひとがわがもの顔でのんびり広々と使ってたりして…。

ひとに巧いことを言って、宇宙に追い出し、濡れ手に泡でガッポリ大儲け…。なんてね。

漆黒のどこまでも静かな宇宙の暗闇の中、昼があるのかないのか。夜があるのかないのか。時間さえあるのかないのか。今果たして生きているのかいないのか。果たして存在すら疑いたくなる。

そんな中では、妙にヘンテコな被害妄想がちょいっと頭をもたげて来ることがある…。

まあ実際、現実は、宇宙での日々はそれどころではないんだけどー。やると決まればやらなければならないことが山ほどある。

それに、湖のほとりMDエリアが今更どうであろうと、ダレがどう使おうが、カレがどう大儲けしようが、今更、どっちでも関係ねーー。

… … …。

いや……、

待てよ……。

ちょっと、引き返して、確かめて、来ようかなーー。

… … …。

でも、大丈夫。地球みんなの政府やSUSGADコンピュータやお付きの「脳だけ人間」たちは義理固いのです。

何より妥協なく本気の本気で地球を、未来を救おうとしている。

まじりっけなし。

湖のほとりMDエリアは、ドームが解除されました。
自然の風が吹き込み、自然の雨が降り注ぎ、湖から自然の虫たちが、入り込み、コンクリートや化学樹脂も草に覆われはじめています。
雑草と言うのは、なかなか逞しいもので、ドームを解除して半年になる訳ですが、すごい勢い。遺伝子組み替えなし。自然の雑草。

自然の風は砂なや埃を運び、歯が立たないと思われるコーティングの上にも、緑の絨毯を敷き詰めてゆく。虫たちがその小さな楽園の中でうたいはじめる。

我らが湖のほとりMDエリア。誰も立ち入ることは出来ません。

自然の手に、地球の胸に戻されたのでした。

半年でもうこんな。湖があるから、自然に返ってゆくスピードも早いのでしょう。高層ビルも鳥や小動物たちのものになってゆくでしょう。

チーバセクション行政は、一定の手を加えることで、自然への還元が効率よく行う。

SSソーラーに、緑に覆われて行くMDのようすが、送られて来た。





2009年4月28日(火)

ソーラとアスカ(91)
「地図のある宇宙」

SSソーラーは、宇宙空間をどんどん進んで行く。

でも、まだまだ地球で観測を繰り返し、分析し知り尽された範囲。既に分かっている。

地図のある宇宙を進んでいる。だからまだまだ安心。

しかーし、これから先。舟の望遠鏡や装置で、まだ見たことのない新しい宇宙、未知の事実を発見しながら、解決すべき課題に遭遇しつーつ、前へ、前へ、そして前へ、と進むしかない。

やれやれ、これからが大変だねー。

でーも、まぁ…、
そこからが、我ら、湖のほとりMDエリアチームの舟、SSソーラー号の使命。本領発揮なのでーすねー。


とは言ってもねー。

地球での観測は、長距離の観測ロケットを飛ばしたり、ものすごく大きな電波望遠鏡、何せ地球の直径を利用、を使ったり、スーパーコンピュータを専属に解析に当たらせて分析して積み上げたもの。
だから、かなりの先の先まで地図が一応ありまーす。

未知のエリアに突入するには、この舟のスピードでゆくとーお…、だーーいぶ先。

そーだーねーっと。

あと、

300年くらいかかるかな。

ちょっと時間があるなー。

どうしようかなー。


まあ、これまでに観測ロケットで見た景色を実際にこの目で確かめて行くと言うのも新鮮でたのしい。新しい発見もあるだろう。

その映像を地球のみんなに送って上げれば、きっと喜ぶだろうな。

新しい情報を得て、地図の完成度も増すだろう。

それに、分かっている宇宙と言っても、刻々と変化を続けているだろう。

いつエリア内で、星が産まれるかも知れないし、死んで行くかも知れない。いつブラックホールが産まれるかも知れないし、次元の裂目が出来るかも知れない。

進んでいると言うことは前の方に注意が行くのだがー。

しかし、もしかしたら、後ろの方向から思いもよらないスピードで隕石や熱線が追って来ることだってある。また、思いもよらない死角から舟に危険が迫ることもある。

舟の上下右左前後内外、時間に次元。あらゆる流れの線の上に障害となるものが舟と重なってはならない。

ひまわりコンピュータ(HMWR)と「脳だけ人間」チームは、各方向、各次元、各時間軸をかなり先の先まで見通して分析をしている。各軸の上で、舟と障害となる事象が重ならないよう、SSソーラー号の安全な航行を確保にしている。


まあ、そうは言っても、あと300年は大丈夫そう。





2009年5月12日(火)


ソーラとアスカ(92)
「ちょっと時間がある」

HMWRコンピュータと「脳だけ人間」チームは、各方向、時間軸、次元にそれぞれ担当を決めて見渡している。四方八方見渡して、先の先まで見渡す。一見点にしか見えない部分も拡大して調べれば面になる。そのなかのまた点にしか見えない部分を拡大すれば面になり、それは果てしない繰り返しである。

かと言って、各チームがあまりにその作業に没頭すれば、逆に何も見えなくなる。
掘り下げることと、全体に戻って見渡す作業の繰り返しとバランスが大切。
また、全体を見渡すチームと掘り下げるチームの役割分担とチームワークが大切。
まあこのように、ひまわりコンピュータと「脳だけ人間」チームは忙しく働き続けるのでしたがー。

まあ、掘り下げたデータを分析統合しても、どうも300年は平穏に宇宙空間を進むことが出来るらしい。

時間があるなー。何しようかー。

答えは、ひとつ。

そう、時間を大切にするのです。時間を貯金する。

簡単に言えば、

「一眠りしとこうかー」

ってとこです。


その間に、やらなくてはならないこともたくさんあるだろう。

がしかし、まだ見ぬ宇宙の果、出来るだけ遠く、また遠くまで辿り着きたい。

ならば、宇宙船において必要なことは時間を大切に先送りすることだ。

この一年間の航行でも、めでたいことに、SS世代のベビーも誕生している。

冬眠するには、やはり100年間は普通に成長し、暮らして、身体と脳がが安定してからの方がよい。

SSの航行と個々のライフサイクルの両面から、最低限必要なメンバーを残して、ひとりでも多くのメンバー市民および、「脳だけ人間」たちの時間を出来るだけ先送りして置きたい。

そのためには、冬眠装置の役割は重要だ。

まあ「脳だけ人間」たちは、眠るのが商売みたいなものだから、特殊な装置もさして必要ないが、100年単位なれば、低温エリアに集まる方がよい。

市民メンバーの労働分担のローテーション、「脳だけ人間」の役割分担のローテーションを決める。

そして、SSソーラーの90パーセントが眠りについた。

舟は平穏な航行時においては眠っている。

これでいいのである。

ある意味、厄介な状況に遭遇するとき、SSの覚醒パーセントは上がる。
大概の場合は50パーセントを越えることはない。

逆に、50パーセントを越えてくれば、かなり厄介な事態に遭遇したと言える。






2009年5月16日(土)


コンサート会場に向かう途中…。
駅から10分ほど歩きます。
線路際にバラの花。花好きなひとが植えるのでしょうか。



ソーラとアスカ(93)
「まかせたよ。ではでは、お休みなさい」

「脳だけ人間」アスカチーム。8人は交代で眠りに着く。と言うより交代で起きているってこと。

あーあ、みんないいなー。お休みタイムなのね。

ひとりで起きているのも退屈つまらない。

だから、ふたりずつ組になってローテーションを組む。

300年はまあ安全らしい。
アスカチーフとソーラさんは300年後に目覚めて陣頭指揮をとってもらうことになる。
じゃー300年を交代で100年ずつ起きていることにしよう。

最初の100年は、ショボさんとひまわりさん。
次の100年をマキアスととうもろこし君。
最後の100年はグラサンじいとハルさん。

それぞれのペアごとに、なかなかたのしい100年になりそうだ。

こうして8人が勢揃いして顔を合わせるのも今度は、いつになるだろう。

300年を越えてからは未知の宇宙空間を進むことになるので、SSの覚醒は30パーセント程度まであがることだろう。

アスカチームのローテーションも3人は起きていることが必要になるだろう。

そうそう、一般市民の覚醒率と「脳だけ人間」たちの覚醒率と言うのは、その役割上おのずと異なるのである。

大事なことはSSの安全な航行と「脳だけ人間」の消耗を極力抑え効率よく未来へ繋げることだ。
言い換えれば、「脳だけ人間」たちは、一日でも、一時間でも長く生きていなければならない。

ローテーションの交代のとき、引き継ぎがあって、これまで起きていた二人とこれから起きている二人が顔を合わせる。引き継ぎの間、十日間くらい、四人の「脳だけ人間」たちは顔を揃えることになる。唯一たのしみな時間。

今は8人が揃って語りあい、笑顔を交している何気無い時間。
この時間がどれだけ大切なことか。

これから、冬眠モードにはいればー。
100年後には、ショボさん、ひまわりさん、マキアス、とうもろこし君の四人が引き継ぎの間、会うことに。
200年後には、マキアス、とうもろこし君、グラサンじい、ハルさんが揃う。

さてさて引き継ぎの間、四人そろったら何をしようかな。
その場にいない、眠りについているメンバーの噂ばなしでもしようかな。

どうせ、フリーズ状態で凍っているんだから、うわさ話したってクシャミも出来ないだろう。
なんてねー。
へへへのへ。

あと、四人揃えばトランプもたのしそうだ。マージャンは賭けるからちょっとなー。ハルさん、グラサンじいは熱くなるかな。






2009年5月22日(金)


ソーラとアスカ(94)
「8人そろうとき……」

どうせ、フリーズ状態で凍っているんだから、うわさ話したってクシャミも出来ないだろう。
なんてねー。
へへへのへ。

あと、四人揃えばトランプもたのしそうだ。マージャンは賭けるからなー。ハルさんとグラサンじいは熱くなりそうだ。

それにしても、冬眠モードに入り、そしてフリーズ(冷凍)モードに移行して深い深い眠りに。
生と死とも分からない境界の世界の中で、そこまでして何故に時間を越え、宇宙を越えなければならないのか。

生きているとは、生き物にとってしあわせとは一体何だろうと、今更ながらに思う。

冬眠モードからから冷凍保存モードに移行して、市民たちも「脳だけ人間」たちは、あんなにコチコチに氷ついて固まってる。あの光景だけは見たくないなー。

でも、100年後でも200年後でも、特別な解凍装置でチンすれば、何事もなかったかのように目覚める。

「あーあ、よく寝た、腹へったー。今っていつだっけ。何か背中が痛えーなー。寝方が悪かったかな。」

などと、ほとんどの人達がお決まりのセリフで、のびのびと、のびをしながら平和な顔をして出て来る。

解凍覚醒装置といっても、緻密にプログラムされた電子レンジで、フリーズモードから静かに時間をかけて冬眠モードに移行する。そのとき、末梢循環方、ナノ細胞活性、電気刺激などにより、静かに静かに体内の循環が再開されるさまは、飛行機が離陸するときのような、新生児が産まれる瞬間のような、誰かを好きになる一瞬のような、厳粛な瞬間なのである。

まあ、解凍覚醒装置のプログラムも緻密で、一歩間違えれば取り返しのつかないことになる訳だが。当たり前のようにそこに身をゆだねている。

長いトンネルをぬけ、細い細い道のりを根気よくたどり、人類は地球を離れ、これからも生存し続けなければならない。


「脳だけ人間」アスカチームの8人がみんなそろって会える日は本当に遠いことだろう。

みんなで笑って話して、それが人生ってもんじゃないのか。そいつのどこがわるいんだ。

だが、「脳だけ人間」の彼等のには許されないこと。


そして、8人全員が覚醒モードになって必要とされるときがあるとすればー。

それはー。

二つの場合がある。

いい方て言えば、新しい、地球に代わる惑星にたどり着いたときだ。

もうひとつはー。
それはー。

SSが大きな困難に遭遇したときである。






2009年6月3日(水)

ソーラとアスカ(95)
「ついに惑星発見」

SS(スペースシップソーラー)は宇宙空間をのんびりと進んで行きました。

SSの90%は深い眠りについています。コチコチ。
覚醒率10%。

目覚めて活動しているメンバーにとっては、360度、大パノラマ。すごい眺め。
まさに絶景かな。

暗い闇の中で星々の輝きがなんとあたたかく照らしてくれることか。

これまでは太陽の恵みに甘んじていた。
それどころか、自ら温暖化を招いてしまった。
地球を守るために未来を切り開くため無数の舟が地球を旅だった。

あふれる光と暖かさは、いつでも、当たり前にそこにあるものだった。
しかし、本当の宇宙は、なんと冷たく凍てつき、暗い闇に包まれていることだろう。
もっと光が必要だ。もっと暖かさが必要だ。

闇のなか、星々瞬きの中、SSは進んで行く。ゆっくり、ゆっくり。
しかし、実はこれですごいスピードに加速されている。光の速さの10分の1くらいのスピードは出てるだろう。

しかし、宇宙の大パノラマはほとんど動かない。忘れたころ眺めて見るとちょっとだけ星々の位置が動いた気がする。


「ショボおじいちゃん何やってるの。」

「あのー、えーと、うーん、まーねー。ちょっと人生を振り返ってー。あっ、そっかー、いやいや、でもなー。本でも書いてみようかとー。」

「わざわざ手書きなんだー。へー、おもしろそー。」

「へいへいほーっの、えいやってね、まーあ、えーっとー、こうして字を書くって言うのがーですね。案外とー、たのしいです。はーい。」

「あははははっ。ショボおじいちゃん。あたしって、なんかすごくうまくない?」

「うーん、えー、まー、そーだなー、あっ、でもなー、そうそう、とても、お上手ですよ。」

いっぱしの「脳だけ人間」のひまわりお嬢もショボさんとは、まるでおじいちゃんと孫のようだ。。

「でもさー、ショボおじいちゃーん、何かさー、100年ってさー、あっと言う間に過ぎちゃうね。何かさー、昨日『起きてる番』のローテに入った見たいな気がするねー。」

「まーー、そうですねーー、うーん、何て言うかー、私なんかもー900歳越えますからねー。それでも、あっ、と言う間。」

「ワーーッ、スッゴーイ。ショボおじいちゃんって、そんなに生きてんのー。キャー。聞く度びっくり。」

「いやー、まー、うーん、そうなんです。」


「そう言えばさ…」

「あっ、そうそう、そうですね…。」





2009年6月11日(木)


ソーラとアスカ何となく……。
「脳だけ人間」アスカチームって感じです。
曇り空と夢見るアジサイたち。





2009年6月17日(水)

ソーラとアスカ(96)
「100年ぶりに」

「そう言えばさー、ショボおじいちゃん。」

「うーん、まーあ、そうですねー、そろそろーですかねー。」

丁度そのとき、パカッと冷凍冬眠覚醒装置の蓋が開いた。
中から輝くカプセルがふたつ出て来た。
「脳だけ人間」ユニット。

これが「脳だけ人間」の現実の姿。ピンクの血色のよい、優良な状態の脳を抱く透明なカプセルが、光を反射して少しブルーに光る。
宝石の様にも見えるし、お皿に盛られた世界に貴重なごちそうのようにも見える。魔法使いの水晶のようでもあり、地球儀が本当の星になってしまったようでもある。

「 五体のある一般の人」がこの不思議な球を、大切に大切に抱えて運ぶことも希にある。
この球に触れるだけで心が通じる。言葉も音もなく直接心で。
それは不思議な感覚。どこからか懐かしい声が聞こえて来る。
だから「脳だけ人間」のカプセルに触れた人は、たちどころに魔法にかかったように惹き付けられ、もうこの球を手から離すことが出来ない。

青く輝く星を抱えたまま、ただただ、ただただじっと、じーーぃっと、そこに座ったまま。いつまでも動かない。

誰も同じように、そこに座り、人混みであろうが、人一人いない場所であろうが、心地よい大きさの球を大切に大切に抱えこむ。うつむきがちに目を閉じて、眠っているようでもあり、耳を澄ましているようでもある。想いをめぐらせているようでもあり、心安く寛いでいるようでもある。
ただ、じーーっと佇む。

気が付けばもう丸一日が過ぎている。今、昼なのか、夜なのかも分からない。暗くなったことも、明るくなったことも気付かない。「 脳だけ人間」と話している。深く深く。

目を開いたとき、大概の人はみな心が元気になっている。この大きな宝石には癒しの働きがある。

「脳だけ人間」の仮の姿は、いつもイメージの中にあり、その人の昔からのいつもの姿だが、現実としては、こんな味気ないカプセル姿な訳だが、これはこれで、調和のとれた美しい惹きつけられる姿である。

なにせ、これこそが人類がコンピュータを使いこなすために進化した究極の姿なのだからー。

このふたつの「脳だけ人間」ユニットこそ、とうもこし君とマキアスなのです。

ジャジャーン♪と

100年ぶりの登場。

「あっ、もう朝ですかー。」

「いやーよく寝た。首の後ろがスーッしたなー。何か腹へったなー。」






2009年6月30日(火)

ソーラとアスカ(97)
「連日、四人でマージャンをする」

「 チーン」

と解凍覚醒装置のプログラム完了を告げる音がして、蓋が

「 パカッ」

と開いた。

中から光を反射させてふたつのカプセルが出てきた。

「脳だけ人間」のとうもろこし君とマキアスのふたりだ。

「じゃ、お休みなさーい」

とお互いに挨拶して、冬眠装置に入ったのが、まるで昨日のようた。つい昨日にしか思えない。

「あらっ、おめざめー。アハハ、おはよ。寝癖ついてるよ。」

「あのー、うーん、いやー、おはようございますー。」

迎えてくれるひまわりお嬢もショボさんも「昨日」と変わらない。

だから、ふたりはけして浦島太郎ではないのでした。

「目が覚めたときお腹すいてんだってね。」

「あのー、まあー、うーん、そーですねー。再会を祝して、みんなでご馳走でも食べましょう。はあー。」

なんだか朝飯にしては豪華すぎるみたいにどうしても思ってしまう、とうもろこし君とマキアスだった。
冬眠ボケは修正されるのに、十日以上はかかる。さすがの「脳だけ人間」にとっても100年のギャップは辛い。

そんな訳でー、
交代の引き継ぎ期間の30日間。
四人はマージャンに明け暮れた。仕事はオートになってるしOK。

来る日も来る日も、マージャン。食べてマージャン、ゴロッと寝て起きてはマージャン。もうこれが崇高な人類の未来を担うべきひとたちなのかと思えば、目を覆いたくなる限り。あきれるばかり。

「どうせ、みんなねて(冬眠)んだからな。ソーラさんとアスカさんもコチコチでい。」

「平気、平気。バレないって。あはははは。ねーショボおじいちゃん。」

「うーーん、まーーあ、そうですね。100年ぶりですからねー。コチコチですし。」

「なんか、いいんすっかねー。ショボさんも先輩も大丈夫って言うしー。」

あっと言う間に日々は過ぎ。トップはとうもろこし君だった。

そしてひまわりお嬢とショボさんは冬眠装置に入って行った。

「じゃーまたね。みんなによろしく。」

「うーん、そうですねー、お休みなさい。」

ふたりは深い眠りにー。
300年後に目覚めたとき、ソーラさんアスカさんに会う。

とうもろこし君とマキアスは男ふたりで話すことも決まってるしー。ね。

そして100年後。
ハルさんとグラサンじいと合流し内緒でまたマージャン。
ふたりは熱い。大のギャンブル好き。
じいを抑えハルさん勝つ。






2009年7月23日(木)

ソーラとアスカ(98)
「いよいよ未知なる宇宙へ」

300年が経ち、いよいよソーラさんとアスカチーフが目覚めた。 そして、SSソーラーは地図の未だない宇宙に踏み出した。

これまで地図のある範囲ではめぼしい星は、我がSSソーラーの向かう空間にはなかった。

「さてさて、これから星を見付けるわよ。」

「異星人(ともだち)にも出会うかもね。」


地球を出るとき、たかが0.00001度の角度の担当エリア。しかしこれだけの距離を進んでくれば、その範囲もまた無限に広がっている。

ここから3人起きていることになった。ショボさんが目覚めた。「チーン」。

それで昔からのこのメンバーでたのしくもちょっとわくわく、といっても宇宙、かなり「のへー」っと一見のんびり日々が過ぎるようでもある。

150年たった頃だった。ちょっと気になる星がある。

まだこの場所からはよく見えないが、非常に気になる。

実は、これまでも気になる星がいくつかあったが、近付いてみると、ハズレだった。まあ、そんなことが何度かあった。 かなりいい線いっているが、まだ星になる前だったり、真ん中の太陽にあたる星がもう膨らんでしまって、旬を過ぎてしまったり、かなり惜しい。あと数十億年ズレていたら、バッチリだっただろうと思う。

今回はバッチリとタイミングも良さそう予感。

この予感と言うのは割りと大切なものである。人類とひとつの星が出会うと言うのは、探してどうこうなると言うものではない。

まあもちろん探さなければ始まらないことではあるが、しかし、探しても、待っても、見付からないときは見付からない。

地球にいた頃、人類は、異星からのメッセージらしきものに出会っている。

しかし、この宇宙の旅に飛び出して500年以上になろうとしているが、未だに何の音沙汰もない。

まあこんなもんだ。
しかし、あのエリアには、人類との切り離せない縁を感じる。それは、楽園であるとは限らない。 一種の不吉さをもはらむが、それでもなを、人類は、少なくてもこのSSソーラーの運命においては、けして避けて通ることは出来ないと言うことなのだろう。

慎重に探査を進めつつも、SSソーラーはローレライの歌に誘われるように、この星をもっと知るために近付いてゆく。

あと少し、あともう少しだけ近づけば、何かが分かりそうだ。

しかし、いつの間にか、舟は、この星の運命に近付き過ぎていた……。






2009年7月31日(金)

ソーラとアスカ(99)
「突然ですが…」

突然ですが…。緊急事態が発生しました。
われわれの舟、SSソーラーは、HMWRーDK8方面宇宙探査に向け3511年に地球を旅立ち、地図のある宇宙を抜けるのに300年、そして地図のない宇宙に入り観測を続け150年になります。

現在の課題は、大変気になる星「エンジェルスマイル」を発見して50年、この星に目標をしぼり、慎重に探査を続けて近付きつつあります。

われわれの舟はこれまで大変順調に、何ごともなく、あまりに平穏に航行を続けてまいりました。

しかし、SS暦4011年11月21日、観測を続ける各チームの各コンピュータから緊急事態を告げるデータが観測されました。
われらのSSソーラーの航行を司るメインコンピュータ、ひまわり(HMWR)はデータを分析を終えました。

結論から申しますと、
われわれSSソーラーは、エンジェルスマイルを間近に、重大なる困難に直面しました。

われわれの前方に長大なる隕石群が襲来することは、みなさんご存じのことでしょう。

われわれはその隕石群を回避して待つべきか、あるいは、隕石群が本格的に襲来する前大急ぎで抜けてしまうかの判断、これが最近の注目の課題でありました。

まあ隕石群の通過を待つとなれば100年は動けませんが、航行の安全には代えられません。

しかし、われわれには、その選択枝も今はなくなりました。
われわれの後方に空間の歪みがうまれ次元のさけめが出現しました。小型のブラックホールのようなもので、その引力の圏内に入ると、けして抜けることはできません。

そのさけめは突然現れました。確に小さなエネルギーの変化は観測されていましたが、これは取るに足りないささいなもの、と言っていいはずでした。

しかし、やはり宇宙は分からない。

竹の子掘りで、

ちょいと土が盛り上がっている

ように、

また、あるいは、
ナマズ石の先が、

ちょいと地面から顔を出している、

ように、

こんなものが出現するとは…。

まことに、びっくりで、そのリスクの大きささえも一瞬忘れそうです。

よって、われわれは、大急ぎで隕石群が来る前なこの宇宙の河を渡り切らなければならなくなりました。

SSは、本日よりべりーウルトラスペシャルバッチグーの特別緊急時体制に入ります。

簡単に言いますと、

生き残れるかどうか、半々。

うーん、ちょっと分かんねーなー。

て感じです。





2009年8月5日(水)

ソーラとアスカ(100)
「緊急艦内放送つづき」

【緊急艦内放送つづき】

もうこうなったら、恐れるものは何もありません。

と言うか十分に恐ろしい状態です。

これより10日間の超短期間で舟は100%完全覚醒状態に入ります。

コチコチのまま消えちゃうのはちょっとさびしいので。

みなさん、
冬眠呆けしてる場合じゃないですよ。

篭ってる君、
そろそろ出番。

あと1年の後には、
私達の命運は決してることでしょう。

あの星に…、
きっと立っていると信じます。

おー、ES。

天使は、きっと、われわれの未来に、SSに…

微笑むことでしょう。

【以上】


アスカチーフのもと、全てのメンバーは目覚め、ここに揃った。

アスカチーフ、ソーラさん、ショボさん、グラサンじい、ハルさん、マキアス、ヒマワリお嬢、とうもろこし君。

八人は、今、軽く挨拶をかわす。

舟の全ては覚醒し、全速力で次元の裂目から離れて行く。

次元の裂目が大きくなり、その引力が完全な力を現す前に、今のうち。

そのことは、つまりは、隕石群の迫る、宇宙の河へと迷いなく突入することになる。

果たして、SSは無事にこの河を渡り切ることが出来るのか。

とにかく、

一瞬の連続、

それが時間の流れと言うものなのだろう。


ー 6ヶ月後 ー

後方に次元の裂目は、完成されつつあり、周囲の宇宙を引きずり込んでいる。その力は拡大してSSに迫っている。しかし、拡大のスピードはわずかににぶりつつある。 逃げ切れるのか。

前方には、隕石群の先頭の部分が光学望遠鏡でも確認できる。見事な河の様でもあり粛々と迫りつつある。

ギリギリでSSは隕石群と接する可能性がある。

また、ギリギリで次元の裂目の引力圏に捕まる可能性がある。

残念ながら、今のところ、それが(HMWR)が導いた答。

こんなことなら何故、もう少し早く始動しなかったのか。

それは、竹の子の土の盛り上がり方があまりにかすかであり、逆に竹の子があまりに巨大だったからである。

またなんでこんな場所に居合わせてしまったのかと悔やんでみても、それは、あの星を見付けてしまったからだ。

我等の舟は

そう言う運命にあったとしか言いようがない。


ー 10ヶ月後 ー

そして、そのときはやってきた。

隕石群の先頭はこまかなちりのように、はじめはSSに降り注ぎはじめた。






2009年8月13日(木)

ソーラとアスカ(101)
「降り注ぐ隕石群」

突然、次元の裂目が現れてから、あっと言う間に…、
もうすぐ一年が、
経とうとしている。

隕石群の到来は分かっている。
しかし、後方には次元の裂目が完成しつつあり、その引力圏が舟を捕えつつあり、やむなく隕石群の到来するであろうエリアに踏み込むしかなかった。まるで宇宙の河を渡るようだ。

向こう岸に渡り切るには…、

あと、たった一月ほどの時間を、
やり過ごせば、
いいだけだ……。


しかし……、
さらさらと、
さらさらと、さらさらと…、
細やかな雨のように隕石群との接触は、
はじまったのだった。

あと少し、あともう少しだけ、時間があれば、
この河をぬけられると言うのに…。


SSを司るスーパーコンピュータHMWR「 ひまわり」の計算通り、

隕石群は降り注ぎはじめた。

あと十日もすると、SSにダメージを与える大きさの隕石がやってくる。

そしてそこから七日間で河を抜ける。

しかしー。


また、さらに問題が、全速力なのだが、最近スピードがほんの少しにぶっている。それは次元の裂目が宇宙を吸い込んでいて、その引力圏の影響が及びつつあるようだ。

あと1ヶ月、緊急時域のクオークエンジン出力もそろそろ使いたいがまだ早い。
エネルギー消耗を考えれば慎重であらねばならない。

細やかに降り注ぐ隕石の粒が少し大きくなりつつある。


傘をささなくてはー。

SSは、軽くバリアーを張る。

だんだんと雨粒が大きくなるように、隕石は大きさを増していく。

レインコートを着なければ、長靴もー。
SSは第二段階のバリアーも張る。冷たさに身体の熱が奪われるように、舟のエネルギーを放出することになる。

舟のひとびとは、それぜれの居場所、それぞれの持ち場に待機して、自分のやらねばならないことをやり、あるいは見守り、そして…、祈った。

「脳だけ人間」たちは、任務についていた。

アスカチームも八人が輪になり、任務についた。

降り注ぐ隕石を見ている。

隕石はますます大きさを増した。第二段階のバリアーで弾いても、その破片で舟に衝撃が加わる。

雨は、強くなり雨宿りをしなければー。

しかし、今、SSに雨宿りをする場所もない。ただ隕石の雨に打たれるのみ。


「脳だけ人間」たちは、大きな隕石を見付けては、ビームで破壊しはじめた。
砕けた隕石は、上手くバリアーで弾くことが出来た。






2009年8月18日(火)

ソーラとアスカ(102)
「輪になってー」

SSの乗組員(住人)は、一般市民も「脳だけ人間」も、100%の人々は冬眠から目覚め、今、SSと運命をともにしている。

それぞれの任務に付き、それぞれのいるべき場所にあり、それぞれあるべき人や仲間とともにあった。

なすべきことをなし、見守り、そして…、

祈った。

「脳だけ人間」アスカチームのメンバー八人は輪になり配置に着いていた。

アスカチーフ、ソーラさん、ショボさん、グラサンじい、マキアスにハルさん、ひまわりお嬢にとうもろこし君。

今は、冗談ぬきでマジである。

しかし、しかつめらしい顔をしてみても、奇跡を起こせる訳でもなし。

グラサンじいとハルさんは、またパチンコに行きたいの、競馬で今度こそ大穴を当ててやるのと、この期に及んでも言っている。

ショボさんは、いつもと変わらず心配そうだ。

「いやー、うーん、まあー、えーと、まいりましたねー、困ったなー、どうしましょうー、うーん」

「ショボ、うるせーんだよ、今は、マジやべーんだって。心配なんて、すんなっていってんだよ。おだまりになって下さるかしら。」

アスカチーフがイラっと。


「忙しくなる前にお昼ねごっこシュミレーションやっとくんだったわ。」

「最近、何か、夢に犬出てきたなー。ミニダックスだね。ソーラさん、これって何か、良いことあるのかなー。」

「知るかっ。」


「とうもろこし君ちゃんと隕石撃ち落としてね。がんばってよー。」

「えっ、ひまわりさん、何、応援してんすか。」

結局、なんだかんだ言って、この八人は、相も変わらないのであった。


アスカチームは受け持ちエリアの隕石をビームで破壊する。

舟を司るスーパーコンピュータHMWR(ひまわり)の意志は、たちどころに「 脳だけ人間」たちに伝わる。その瞬間のイメージとして伝わる。

だから、次の瞬間には180度逆方向を撃ち砕かなければならなかったりする。しかし、それも「 振り向きざ」まってやつで余裕だ。

隕石の到来は既に激しさを増して来た。
すでに一発でもまともに食らっては大変だ。

舟は、向かってくる全ての隕石に何らかの対処しなければならない。

ビームで砕くのもひとつ。

かわすって手もある。

いなす、逃げる、もあり。

舟のスーパーコンピュータ(HMWR)ひまわりはなかなか頑張るのだ。


あと七日。 あと七日間で向こう岸に渡れるのだがー。





2009年9月3日(木)

ソーラとアスカ(103)
「『脳だけ人間』の意志こそが…」

「脳だけ人間」アスカチームは、八人が輪になり力を合わせてSSに降り注ぐ隕石を、HMWRひまわりコンピュータと連携して、ことごとく撃ち砕く。

決められたタスクをしっかり守れば、あとは、数ある「脳だけ人間」の他のチームが同じように頑張っている。

八人で協力しつつひたすら隕石を撃つ。ひとりが外しても次のひとりがフォローする。また外したらその次が逃さない。

大物は、八人のビームを集中させて砕く。もっととてつもない大物は、他の「脳だけ人間」チームと連携して砕く。

スーパーコンピュータHMWRひまわりはイメージをたちどころに伝えて来る。
SSの全体像が分かる。

一日、二日、三日と過ぎる。

降り注ぐ隕石はその激しさを増して来た。

冗談口を交していた八人も口数は減ってゆく。

降り注ぐ隕石との接触面積を少なくするために、SSは今は立て向き。

立て向きの状態で河を渡る方向へ、まあ横に、進む。

なおかつ、隕石の流れに抗がうことなく、ときどき、後方と言うかに、後退りしながら、確実に向こう岸に進む。

そもそも宇宙では、前とか、後ろとか、上とか、下とか、あまり関係ない。

クオークエンジンの出力はどの方向であろうと移動可能だ。

HMWRひまわりは、すべての可能性と反応速度でSSの損害を回避してゆく。

昔、拳銃(ガン)と言う武器を30センチの距離から発砲すればだいたい当たるし、相手は命を落としたが、それは昔の話。現在のスーパーコンピュータの計算と反応速度からすれば、回避する方法はいくらでもある。

しかし…、降り注ぐ隕石群は、激しさを増している。このスーパー回避を断えることなく、もう六日間果てしなく続けている。縦横無尽にSSが位置を換えるにはクオークエネルギーも必要だ。お腹もペコペコ。

さすがに(HMWR)もタスクが過大な状態が延々と続く。

そして、このシステムを支えるのは…、

「脳だけ人間」たちの意志だ。

その彼等も、ものすごい集中と強い意志をもう六日間保ち続けている。普通の覚醒ではない。150%の覚醒レベルといっていい。「脳だけ人間」たちは、HMWRと違い生身なのだ。
スーパーコンピュータHMWRは、神のように万能に思えた。

しかし、この極限状況の中で、確信する。

「脳だけ人間」たちの意志、人間の意志こそが、この「神」を動かしているのだとー。






2009年9月12日(土)

ソーラとアスカ(104)
「最後の力」

SSソーラーのスーパーコンピュータHMWR「ひまわり」は、その機能のキャパシティのすべてを駆使して、降り注ぐ隕石群をスーパー回避し続けている。

無数の「脳だけ人間」たちの意志がそれを司り、人々の祈りがそれを支えている。

しかし、七日目を迎え、HMWRの一部にシュートしてしまう回路が小さなほころびのようにあらわれた。

また「脳だけ人間」たちの中には、ショーとして気を失うものもちらほらと出はじめた。

また、クオークのエネルギーの供給もにぶり、バリアーの出力を低下させる瞬間がある。

隕石をビームで撃ち砕いて、これくらいならバリーで弾けるはずのものが、SSにダメージを与えることも出てきた。

致命傷にならないが、あちこち、大事な舟にころびが出てきた。

数ヵ所かなりやられた部分も出て来た。そのイメージは、「脳だけ人間」たちにダイレクト伝わり、小さな痛みになる。

痛みが伝わってくると言うことは、まだ、その部分のフィードバック機能が働いていると言うことなので、まだ大丈夫だ。

あと一日、

あと一日やり過ごせばー。


ここまで来たんだ。

SS(スペースシップソーラー)を司るスーパーコンピュータHMWR(ひまわり)、そして「脳だけ人間」と一般市民は、最後の決断をする。


最後のクオークエネルギーを全開にする。

押し寄せる隕石群の宇宙の河を渡り続ける。


「脳だけ人間」アスカチームの八人も、すでに集中力と覚醒率維持が限界の状態を越えている。

「ショボさん、大丈夫」アスカチーフが励ます。

しかし、アスカチーフも疲れ果てている。

頭がボーッとして、いくら集中力してもミスがあり、意識が遠くなり、視界がかすむ。

もういいかなー。

仕方がないことかもー。

もう頭がはじけそうだー。


クオークエンジンのエネルギー全開にあわせ、

八人も、最後の手をうつ。
大きなリスクがあるとしても、やるしかない。

八人は輪になり手を繋ぎあって、意志を一つにする。

八人の「脳だけ人間」たちはシンクロして、うっすらと光りはじめた。

100%のシンクロ。八人の意識はひとつになる。八人のすべてが今伝わって来る。 自分は誰かさえ問題ではない。

そして、舟全体のそれぞれの「脳だけ人間」チームはシンクロする。

それはまた、SS全体、チーム同士に、壮大なシンクロの波が広がる。





2009年9月15日(火)

ソーラとアスカ(105)
「アスカチーフ」

折れてしまいそうな心で、何とか踏ん張っていたそれぞれの「脳だけ人間」たちは、その瀬戸際でー。

「私の背中だけみて着いて来て。足元は奈落の底。見てはだめ。私に力をかして。」

「ソーラさん、みんな、こっちよー」

アスカチーフが呼んでいる。

静かに広がる意識の海の中。やさしく背中を支えられるように、ひと筋の光に向かって心を合わせる。

もうひと頑張り。
あの光にたどりつければー。

「うーん、まーあ、えーと、ほんのー、もう少しですー。ひまわりさーん。とうもろこしさーん」

ショボさんが呼んでいる。

「マキアスの旦那、だらしねーなー。しかりついてきなって。迷子になっちまうぜ。おっ、ハルねえは、なかなか威勢がいいじゃねーか。」

グラサンじいが呼んでいる。

雨あられと降り注ぐ隕石。満身創痍。しかし、SSと「脳だけ人間」たちは、最後のエネルギー全開、全員完全シンクロで、丁寧に、根気よく、このウルトラスーパー回避を連続させ、舟へのダメージを最小限度にとどめている。

一日の終わりに夕日が綺麗に大きく見える。舟もひととき元気を取り戻したよう。でも、夕日の輝きが長くは続かないように、一瞬の輝きだから美しいように、しだいに夜のとばりの中に飲み込まれて、消えて行く。

SSにも、限界が訪れたようだ。


アスカチーフは、みんなの意識に支えられて、300%近くに覚醒して、果てしなく降り注ぐ隕石群をHMWRひまわりと完全シンクロして、果てしなく延々とタスクを遂行し続けた。

疲れもなく、恐怖もなく、強い意志だけがある。

両脇には、ショボさんとグラサンじいいてくれる。周りには、ソーラさん、マキアスやハルさん、ひまわりさん、とうもろこし君がいてくれる。

全てのタスクを完璧に遂行しつつ、めまぐるしはずなのに、アスカチーフには、とても静かで、とてもゆったりと時間が過ぎるように思えた。いとも簡単に押し寄せる隕石を打ち砕くことができる。

いつしか、それが永遠なのか、ほんの一瞬なのかも分からない。


誰かが背中を撫でてくれている。頭をなで耳にかかる髪の毛のほつれをとかしてくれている。

そう、この暖かな手はまるで日溜まりのようだ。春の日差しの中で、みどりの風に吹かれてー。

子供の頃に風邪をひいて息が苦しいとき、誰かが背中を摩って撫でてくれた。

あれは、

おかあさん。





2009年9月18日(金)

ソーラとアスカ(106)
「運命の七日間は過ぎてー」

マキアスは目覚めた。

あれ、バスに乗って会社に行かなければならないはずだがー。

いやいや、そうじゃなくて……。

顔を洗って、ヨットのシャツを着て学校に行くんだったかな。

いやいやそうじゃない。

冬眠から目覚めた訳でもない。
「脳だけ人間」としていつものローテーションに着くのとも違う。

……、

「あっ、そうだった」

たぶん、自分は、まだ存在している……。

ここはどこだ。

ハルさんは。

おーぃ、

アスカチーフ、ソーラさん、ショボさん、グラサンじーい。

ひまわりさん、とうもろこしくーん。


……。

「あらっ、マキアス。目覚めたのね。」

ソーラさんが呼び掛ける。

「うちら、生きとるとよ。うたらは、生きとるんよ。」

ハルさんの声だ。
無事だったんだ。

SSを司るスーパーコンピュータ(HMWR)ひまわりの予測では、キリギリのところで、河を渡りきることは、出来ないはずだった。

しかし、我々の舟は、今、こうして、この宇宙に存在している。

クオークエンジンも停止して、電源、酸素も緊急時のユニット独立単位に切り替わっている。重力のコントロールもおかしい。

(HMWR)も、

「 グッドモーニング、さわやかな朝だねー。みんな元気かい。」

。現在自動復旧プログラム作動中。

かなりいかれている。

あの七日間が過ぎて
いったいどれくらいの時間が過ぎたことだろう。

どうやら、次元の裂目の引力が、隕石の河の一部を飲み込んだ訳だが、その引力が予想以上に大きく、河のコースを(HMWR)の計算以上に、大きくずらせたようだ。

その誤差分、わずかな時間早く、SSは、隕石の河を抜けることが出来たのかも知れない。

天使はこの舟に微笑んでくれたようだ。


でも……。

アスカチーフの声が聞こえない。

ショボさん、グラサンじいの意思をどこにも見付からない。

とぎれとぎれのネットワークの意識の中を探しても、どこにも見付からない。

あの七日間を抜けるために最後はシンクロするしかなかった。
そのために、SSを支える多くの「脳だけ人間」たちが、はじけて消えてしまった。

しかし、その尊い犠牲の上に、今こうして、あの七日間を抜けることが出来たのだ。


アスカチーフありがとう。
ショボさん、ありがとう。
そして、グラサンじい、いつもハッパかけてくれてありがとう。





2009年9月20日(日)

ソーラとアスカ(107)
「歌が聞こえる」

今、
わたしたちの舟は、あの七日間を越えて、宇宙の河を渡り切った。

今、
天使は、わたしたちに微笑んだ。

今、
わたしたちは生きている。

明日のことは分からない。

でも、今日は、生き抜いた。


とぎれとぎれの通信網からはー、

無数の「脳だけ人間」たちが歌っているのが伝わって来る。

人々が歌っているのが聞こえて来る。


マキアスたちもみんなで一緒に歌った。

歌うほかには、どうすることも思いつかなかった。

歌は、地球、ヤーポン地域、20世紀の歌。みんなよく知っている。大いなる故郷、地球をいつくしむ歌。

みんなで歌った。

声を合わせて歌った。

大きな声で歌った。

いつまでも歌った。


歌をうたう動物は人間以外にもある。

クジラもイルカも小鳥もー。

でも、まあー人間ほどに歌う特性を持った動物も他にない。
機嫌がいいとき、
悲しいとき、
怒ったときだって、人は歌をうたう。

昔、
母さんが子守唄をうたってくれた。

青春時代、
流行り歌に心をなぐさめられた。

めずらしく、
父が風呂に入って鼻唄を歌っていたのを覚えている。


人類は、進化の中で、神からいろいろな贈り物を授かった。

だが、人類は、神を恐れず、宇宙の大空に、あるいは遺伝子の小宇宙にこぎ出した。

それもまた、
あるいは、神の導きなのかも知れない。


進化の中で人類に与えられたものを振り返るとき、
やはりそれらのものは、神によって与えられたとしか思えない。

それは、
目の前にいつでも見ることができる、
両手
であったりー、

あるいは、
言葉、
であったりー、

ひとを思いやる、
やさしい心、
だったりする。

人類は歌を歌うことが出来る。
一緒に好きな歌をうたうことが出来る。
闇の中でも希望を失わずに心を支え合うことが出来る。

こんなことが出来るのもまた人類と言う種だけなのである。
歌もまた、
神から与えられた大いなる力なのである。


宇宙船のシステムを支えている大勢の「脳だけ人間」たち、そして人々たち、

今日の勝利を讃え、
今、歌っている。


……。


自動復旧プログラムが作動しはじめた(HMWR)ひまわりが、エンジェル・スマイルの姿をモニターに大きく映し出している。


そして、この星は、
やはり、予想通り、いやそれ以上に、
青く、美しく輝いていた。


2009年9月22日(火)

ソーラとアスカ
「あとがき」

長い間、お付きあいいただきありがとうございました。

2007年11月21日に愛犬アスカが天寿を迎えました。

2007年。
この年は、いろいろな意味で、自分の周囲にとって、節目の年となりました。

アスカがなくなり、その追悼も込めて、この「ソーラとアスカ」を書きはじめました。

思い付くまま、気の向くまま、書くのも興が乗って来るとけっこう楽しいもので、通勤電車の吊革に捕まって、ご機嫌で時間を過ごすことができました。

網棚に重い鞄をあげる事が出来れば、身体も軽く楽チン。
最高です。

書きはじめて、(107)の最終回を迎えるまで、約2年かかりました。

その間、網棚に荷物や鞄を3回忘れました。

2回はドアを降りてすぐ気付き、車内に飛び込み、事なきを得ました。

しかし、一度は、職場の旅行に行くときで、着替やスエットの上下やおやつなど一式が入ったスポーツバックを忘れたことがありました。
連絡を入れ、旅行が終わってから駅に取りにゆき、無事に手元に戻りましたが、相当懲りました。

まあ、ひとは、案外自分の考えたことを話してみたいものなんだろうな、と思います。

ブログ、ホームページなんてものがなかったら、きっとこんな話しを書くこともなかったなと思います。

音楽は、華薩さんの「みんな大好きメインストーリー」をつけて、時間あるときに、第三部「ソーラとアスカ未来編」としてアップしたいと思います。

とにかく、最後まで書くことができました。


ありがとうございました。

「ソーラとアスカ」 おしまい。

2009年9月22日

makio−ym






お付きあい頂いたみな様、

どうもありがとうございました。

「ソーラとアスカ」 おしまい。

2009年9月22日

makio−ym





BGM

みんな大好きメインストーリー(虹を架けようー)

by kogarashi and gasatsu (2003.12.27) 








またね〜(^_^)









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